読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア

 放送と通信の融合をめぐり、新聞や民放連からは、公共メディアへの展開、とりわけネット受信料に対して否定的な論陣が目立つが、本著を読むと、いかにそれが時代遅れなのか、ということがわかる。

 三部作の完結として、KADOKAWAではなく毎日新聞出版から刊行されたのはどういう意味があるのか不思議な気がするが、本著自体、電子書籍や過去の2作も無料で読めるようにするなど、面白い取り組みをしている。

 引用したいポイントは多々あるが、著者が太字にしているところで、
p78:僕は近い将来放送が通信に飲み込まれるのではないかと感じていた。
p158:テレビはもはや、地上波放送を見るためだけの機器ではない。 ことを、
ハイビジョンのアナログからデジタルへの転換(1994/2/22日経一面p97江川局長発言)、地上デジタルの開始など
歴史や豊富な事例を踏まえながら紹介している。


発刊した毎日新聞出版のサイト⇒ http://mainichibooks.com/books/business/post-408.html
電子書籍版を紹介するKADOKAWAの発表資料→ https://info.kadokawadwango.co.jp/files/20170707.pdf
カドカワストアでの三部作の紹介→ https://store.kadokawa.co.jp/shop/pages/medianokoubou.aspx
ePUBでの試し読み→ http://epub-tw.com/35486/


 きのう産経新聞の紙面で、NHKネット受信料の賛否の識者の意見を掲載していたが、ネット検索では見つからないので、まとめとプレジデントの記事へのリンクを以下にメモ↓
ライブドアニュースNHK受信料問題のまとめ→ http://news.livedoor.com/NHK%E5%8F%97%E4%BF%A1%E6%96%99%E5%95%8F%E9%A1%8C/topics/keyword/29144/
◇同上から 「NHK"テレビがなくても"受信料徴収を検討」 2017年11月3日 11時15分 プレジデントオンライン→ http://news.livedoor.com/article/detail/13840475/


 著者が指摘する論点などを以下引用↓
◇21世紀のこれからのITとメディア産業はモバイルとデジタル化されたコンテンツ、とりわけ動画配信を中心に大変動期に入ると僕は考えているp75
◇21世紀に入り日本では3件のイノベーションがあった。通信ブロードバンドで世界最速の光ファイバ、携帯の進化として3G化、3件目は、地上波放送のデジタル化で、官僚主導で実現したのが日本的p94
◇新しい技術革新と世論を葬り去ろうとする日本民間放送連盟の抵抗があった。主張は「テレビ番組はテレビという箱の中で完結する」という一点p108-109
◇デジタル化とIT革命という大きな時代の流れの中で「通信と放送の融合」が入り口段階で不毛に終わったことは残念p114+デジタル化とIT革命の光と影。その創造力と破壊力の凄まじさは、先に述べた富士フィルムの例をあげるまでもなく…多くを語らない。「革新は破壊から始まる」ことを直視することが恐ろしいのだp182+(アメリカの)鉄道会社の過ちを指摘して「ハリウッドは事業の定義を誤ったのだ」と断定したセオドア・レビット、僕には日本のテレビ局も同じ轍を踏んでいるように見える…日本のテレビ局もアメリカの鉄道やハリウッドの誤ちを繰り返さないため、自らを21世紀の今日にあわせて再定義してほしいと思うp197
◇東大の坂村健著『IOTとは何か 技術革新から社会革新へ』(角川新書)での発言「人間の社会はどんどん変わる。テクノロジーもどんどん変わる…制度面も変わっていく。ところが、成功してしまった組織はそれについていけない。テクノロジーの変化にはついていけるかもしれないが、最適化して既得権益の塊になった社会的なクローズドシステムが残り、変化に対抗する」
◇今行動すべきはスマートフォンでテレビ番組を楽しめるかどうか、テレビ局は失った視聴者を再びコントロールできるようになるかどうかの挑戦である。現在はスマホに出てくるのは動画配信だけだから視聴者を新規の事業者に奪われるのに任せているのだp205
クラウドとモバイルによって、いつでもどこでも誰とでも放送番組をシェアするというインターネットの長所を取り入れ、放送の視聴スタイルを変えるのだ。放送事業をエンターテイメント事業として認識するならVOD放送の長所をひき出すことが、「テレビの再定義」だ。p206従来型ビジネスモデルからの大転換ができれば、放送は21世紀型モデルに進化する。
◇イタリアの公共放送ライは、無料OTT(動画配信)サービス2016年9月開始で、最初の2か月でコンテンツ視聴数は74%増加、利用者も50%増加したという、見逃し配信やサイマル配信を始めれば視聴者は大きく増える根拠にp219


 変化のスピードが速く、かつてなじんでいたPCも、11月2日、富士通がパソコン事業をレノボに売却と正式に発表した。関連記事で、すでにNECのPC部門もレノボになっているという。いま使っているのがFMVブランドなのだが、どうなっていくのか・・・「変化」を恐れてはいけないと痛感する。

{2017/10/20-24読了、記入は11/4土}