読書録

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思いやりはどこから来るの?

思いやりはどこから来るの?: 利他性の心理と行動 (心理学叢書)

思いやりはどこから来るの?: 利他性の心理と行動 (心理学叢書)

心理学叢書のスタートとして出版された本著は、一般読者としてもきわめて興味深く、生き方を含めて考えさせられる内容だった。


出版した誠信書房のサイト⇒ http://www.seishinshobo.co.jp/book/b166099.html
(目次と各章ごとの執筆者の記載もあり)


印象に残ったポイントなど以下、引用
◇ロイヤル・カスタマーを増やす、すなわちコミットメント関係のある顧客を増やすことが企業収益にとって重要なことなのですが、ここに思いやりが深い関わりをもってきます。p6(コミットメント関係とは、互いに好意や愛情を感じ、進んで相手と一緒に思う関係の意味+短期的な利益を逃すことになっても同一の相手との関係を継続する場合)→社外スタッフに向けられた利他的行動でやる気が向上p15ex旅行者が派遣の添乗員を名前絵呼ぶ、ねぎらいの言葉をかける、慰労パーティの開催→顧客の感動や満足度につながる


東日本大震災阪神淡路大震災の際にボランティア活動を行った3つの会社の分析で、社訓とか企業理念を社員が共有し企業風土として根付く+トップの意思決定と社員の志が一致し企業風土と三位一体で、向社会的な「思いやり行動」に→働いていて良かったと誇りを持てる日常的な企業活動が重要。企業も熱い血の流れている人間の集まりで、日常こそ強い企業の原動力に。p62-63
デンソーの援助活動 p49〜
デンソースピリット=先進(驚きや感動を提供)、信頼(期待を超える安心や喜びを届ける)、総智(チームの力で最大の成果を発揮)
→トップの認識と指示+社員からの志向を後押しするスピリット+社内全体が呼応する風土
クロネコヤマトの現場独断援助活動 p54〜
→社訓第一条「ヤマトは我なり」17万人一人一人が代表+企業姿勢第三「社員各人が自律性と自発性を発揮し、常に働く喜びに満ちあふれ、社員と家族が夢と誇りの持てる企業を目指します」第五「地域の一員として信頼される事業活動を行うとともに、障害のある方の自立を願い、応援します」
→宅配便一つに10円の寄付や車をボランティアに使い130億円の減益だったが、株主の深い共感を呼び、この会社で働くことを誇りに思う大きな価値をもたらした
ダスキンのトイレ掃除と洗濯 p58〜
→社員から自発的に発想で、会社も協力を表明したが、これができたのは「自らは損をしても人のために尽くす」という創業理念と社長が説明。
→経営理念「自分に対しては 損と得とあらば損の道をゆくこと 他人に対しては 喜びのタネまきをすること 我も他も物心共に豊かになり 生きがいのある世の中にすること」

◇バトソンの思いやりモデルp101〜
→他人を援助が必要な者として知覚する×他人の福利の尊重⇒共感的配慮→利他的道義づけ×可能な行動についてのコストー利益分析⇒援助するあるいは他人が援助するあるいは何もしない

◇p138「思いやり」や「利他主義」というものと、いわゆる「組織に対する裏切り者」や「売国奴」に対する強烈な憤りというものはいずれも、同様の進化論的構造の中から創発されてきたものであると考えられるのです。

◇「サイコパスと呼ばれる精神疾患によって、人間の利他性・愛他性を促進する脳領域の機能・働きが低下し、利己的・自己中心的になっている。可能な治療を探さなければならない」への違和感は、価値観を、病気や不健康な状態と判断できるかという問題。病気とは健康とは何か?p169


最後の論点などは、ストーカーがらみの凶悪な事件でも見られる点であり、なかなか難しい。


{6/24-7/1読了、記入は13}