読書録

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人事と法の対話 新たな融合を目指して

人事と法の対話 -- 新たな融合を目指して

人事と法の対話 -- 新たな融合を目指して

働く環境が大きく変化していく中で、労働者を守る労働法と、人材をマネジメントする経営的な発想との間で、いま、何が課題になっているかを浮き彫りにしてくれる内容となっている。


あとがき(p303〜307)で守島教授がまとめているように、今の論点は、「これまでの労働法による窮屈な規制を緩和し、人的資源の活用に関して、もっと柔軟性を持ち込まないと、企業はグローバル経営の時代に戦っていけない」ということだ。ただ、労働法の大内教授との対話を通して、すでに優良企業が取り組んできた正社員の雇用維持努力など、単に法律を変えれば済むという問題ではないという。多様な労働者像を前提として企業が新たな競争環境に対応する人材マネジメントを支援しつつ、落ちこぼれや不利な立場に置かれる労働者の保護と救済という基本的な立場は維持するというような形を模索していく必要があるという。まさにその通りだと思う。


本著の目次については、出版した有斐閣のホームページ⇒ http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641144521


また、対話の中で印象に残ったポイントについて下記に引用する。

◇イオンの人事部長が紹介する正社員5点セット=何でもやります、どこにでも行きます、いつでも働きます、65・60歳まで働き続けます、優秀です p44

◇(異動)公平性とか納得性は、満足度とかモチベーションとかに影響するので、企業は、できるだけ個別のニーズを丁寧に聞いてあげて、加納であれば対応するという動き方

◇ベネッセの人事課長は、ワークライフバランスだと、仕事か個人かという話になってしまうので、社内では、ワークライフマネジメント=うまく統合するという考え方 p115

◇川上教授によると、メンタル不調は平均1%で、企業によっては2%超える。最近は休んでいるときは私たちの責任ではないと連絡を取らなくなってきているが、プライバシー配慮に加え、うつ病だと何も連絡を取らないほうが、安全配慮義務違反リスクが下がる=連絡をとって何かあったら大変だから放っておく p165

コマツ顧問によると、グローバル化に伴い職責に基づいたグレード制というアメリカ型の給与制度が部長級には導入されている。組合員レベルは経験を積んで職能が高まると給与があがり1年たつと先輩に追いつくという職能資格制度だが、アメリカ人には理解してもらえない。p271 人事は人が幸せになりたいと思っているときに、手を貸せる仕事かもしれない。 p279

◇人事の普遍的な原則は、守島教授によると、人の信頼を大切にする、公平性を守っていく、人の期待を裏切らない。ただ国や地域によって違うので、方法論や制度面で適応していくことが必要になっている。 p282 ただ、公正だからといって幸せにはならない p285 本人が望むものを提供してあげるということが、本人も人として幸せになるとと同時に、人材としても活用されるという部分は、どこの国でも違わない p285


この本を読んでいた時期に、テレビ番組の『アジア立志伝』で「人事改革で世界競争を勝ち抜け〜張瑞敏(ハイアール)」の再放送があったが、当初は、松下幸之助の著書を読んで経営哲学を学んだが、中国の家電工場で品質管理がひどかったため不良品をハンマーでたたき壊したうえ、信賞必罰の成績主義を明確にして復活させたというストーリーが描かれていた。象徴的だったのは、タイだったかのサンヨーの工場では、赤字続きだったのが、ハイアールの35歳の支社長が人事管理をしたところ、急成長を遂げたということは、同じ工場・人材なのに、制度が変わるとここまで変わるのか、と衝撃を受ける。

また、ハイアールの張氏が、「現状に問題がない」という部下の報告に怒り、課題をみつけて改革していく姿勢がないとダメだと話しているところにも、共感した。


人事や職場はどのような形が良いのか、これから先の時代も見据えながら考え続ける必要があると痛切に感じる。

{12/14-25読了、記入は30}