読書録

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信頼の条件〜原発事故をめぐることば(岩波科学ライブラリー)

原発事故をめぐっては、さまざまな方がテレビや新聞、論壇に登場したが、その当時の発言を細かく分析して、なぜ情報が誤ったのか、なぜそうした情報が出され効果を及ぼしたのか、どのように信頼が失われたのか、を解説している。


また、議論の前提として、「知らない」ことを前提にふるまう科学者と、「知っていること」という態度をとる専門家と分け、専門家としての主張が、ともすれば「好都合な状況だけを拾い集めたり、不都合な情報はなかったものにしたり、わからないものを存在しないものとしたり、都合のよい状況を事実に反して作り出すといった操作を伴う発言は少なくありませんp20」と批判している。それはかつて水俣病を認めてこなかった状況「専門的知識に従ってっ説明できない現象は排除される構造p35」とも本質的には同じ循環論に陥っているという。

ネットでは、その要点や発言を取り上げられた方々、本著の目次が、すでにアマゾンの商品紹介レビューで紹介されているので、ここでは省略する。


著者は、信頼を保つための要件として、以下をまとめている。p80
形式に関する要件:1.一貫性、2.包括性・体系性、3.説明・挙証責任
内容や位置づけに関する要件:4.話題の妥当性、5.事実性、6.内容の妥当性
⇒専門家が科学的態度を取戻し科学的態度をもって行動すること、そして、コミュニケーションを再配置し、また再配置を可能にするよう具体的な状況を変更することであるp86


最後に紹介されている押川正毅氏の東葛地区における「東京大学環境放射線情報」をめぐる論点は、知らなかったので一部引用で備忘録とする。すなわち、放射能汚染対策の必要性を否定する根拠となったが、対策の遅れにもつながったとの指摘から、本著著者らの要請で内容が修正されたという。「近傍にある天然石や地質などの影響で平時でも放射線率が高めになっている」という、科学的に根拠がなく部分的に完全に誤った説明が公式に発表した情報にあったことを「東大の歴史上にも特筆すべき汚点」として厳しく批判している。


何が正しいのか、きわめてわかりにくい時代になって、「科学的」態度で愚直にものごをと見て情報を集め、判断していく必要性は、ますます高まっていると考える。


{10/12-13読了、記入は19}