読書録

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パナソニック・ショック

パナソニック・ショック

パナソニック・ショック

日本の家電業界がなぜ苦境に陥ったのか…本著は、松下電器の歴史を丁寧に追うことで、ヒトや消費者を重視した当初の経営理念が変質し、山下社長の時代に「総合エレクトロニクス・メーカー」として将来像を示しながら立て直そうとしたのに、中村社長のプラズマ投資と破壊、それを引き継いだ大坪社長の時代に完全にダメになったと捉えている。著者の言葉を引用すれば「経営危機を招いたのは、中村・大坪時代の失敗が根本原因であることは間違いないが、それは同時に山下革命を貫徹できなかったということに他ならないp244」ということだ。

著者の考えは、ダイヤモンド社のオンライン記事でコンパクトに紹介されている⇒
http://diamond.jp/articles/-/36864 のでこれを紹介。
1.5兆円の赤字に沈んだ“家電の巨人”「パナソニック・ショック」を読み解く
――ノンフィクション作家・ジャーナリスト立石泰則氏インタビュー


印象に残ったポイントとしては、
◇天涯孤独な幸之助は、長男・幸一を授かるが300日足らずで急死し、喪失感から仕事に邁進し、会社は家族のような存在であったこと。「満たされることのない家族の愛を求め続けた寂しいひとりの経営者p133」
◇山下社長は、部下の佐久間に、塩野七生の『海の都の物語』を読むよう指示したのは、正しい方向を見定めるために大切なのは情報が大切ということ。スパルタが衰退しベネチアが生き残ったが、松下はスパルタと同じように強みが弱みにかわる恐れがあるという認識。
◇中村社長は「経営理念以外はすべてはい秋の対象」と宣言、一方、北米からはプラズマでは売れず液晶をという声があったのに進言した役員を更迭した。「市場の声を聞いて大きくなった会社のトップが市場の声を無視p187」
◇凡庸な経営者ほど組織をいじりたがる、ビジョンもなければ、事業戦略もないから、ロードマップを描けない。
◇創業者精神こそが企業誕生や成長、生存の源泉(p210)
◇復活の鍵はテレビしかなく、4Kこそ主戦場。高画質=高密度の定義をひっくり返し新たな定義。震災も恐怖感を伝える映像が出せたかもp240


著者が主張する「4K」については、それほど高価なものを市場が求めるだろうか、という疑問は残る。韓国、中国、台湾の家電が、リストラされた日本の技術者を取り込み、廉価に高機能な製品を送り出している中、アップルのように、独創的で利用者が使いやすいモノを生み出していくための工夫が求められているのではないのだろうか。

{10/8-12読了、記入は19}