読書録

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テレビコメンテーター 「批判だけするエラい人」の正体

厚労省官僚から学者に転身した著者が、関西のTV情報番組で、大阪市橋本徹氏の維新八策を批判したところ、本人から「批判だけ」と攻撃されたという。そこで、コメンテーターとは何かを考えて書かれたという本著は、業界の内幕的な話から、今の社会・政治状況の抱える課題を浮き彫りにしていて、面白い内容だった。

ネットの台頭でメディアの地位低下が指摘される昨今でも、著者は、コンテンツの質や視聴率を意識した番組作り、エンターテイメント性などで、テレビは王様の地位であり続けるだろうと予想している。一方で、大きな政府なのか小さな政府なのか、正解がわからない今の社会の中で、いわば権力と同じよように見られる存在になり、世論やそれをバックにした政治家から厳しい批判を受けるようになってきているという。公正中立がありうるのか、という議論は、佐々木俊尚氏が指摘していた状況認識とも符合するところがあり、だからこそ逆に、著者のようなコメンテーターが活躍する場が増えてきたということなのかもしれない。

ノウハウ的な情報も盛り込まれているが、疑問を持ちシニカルな視点にたって物事を考える、というのは、業界に限らず、わかりにくい世の中だからこそ、常に持っていたい。

著者のブログもあったが、どうもブログは苦手のようで、最近は更新されていないようだ。
http://nakanomasashi.com/


(目次ー引用)
第一章 内側から覗いたテレビ業界;
◇MCはすごい←番組を回せるから
◇報道・情報番組は誰のものか?←プロデューサーやディレクターなど番組の制作スタッフ
◇「テレビスタッフ」支配と「官僚支配」はよく似ている←長時間残業と過剰な気の遣い方で舞台裏を回す
◇「数字のとれる政治家」にどう向き合うか←苦情を言われると困るバランス感覚
★<補論>緊張を解きほぐす技術:自分の主義主張を持つ、頭の中を理路整然と整理


第二章 コメンテーターでメシは食えるか;
◇フリーにやさしいマスコミ業界
◇副業の講演は単価100万円


第三章 誰がコメンテーターをやっているのか;
◇どういう経歴・職業の人がコメンテーターになれるか?:1マスコミ出身、2プロフェッショナル、3「元〇〇」の人びと、4若者代表、5大学教授


第四章 コメンテーターになる方法;
◇売り込みはほぼ不可能?:「マスコミ側から依頼してくる」というのが基本的な戦略
知名度がない人はどうする?:1ネット活動、2言論活動、3実践活動
◇勝ち残るためには、前歴を忘れろ:委縮せず態度をかえず、テレビカメラの前では平等であり、今の自分の意見が求められている


第五章 コメンテーターの「技術」と「能力」;
◇コメンテーターの実力は4つの指標で測られるp97
1基礎体力:A「知識・教養」B「経験」C「信念」D「情報量」
2知力:E「考える力」F「理解する力」G「観察する力」H「★疑問を持つ力」I「要約する力」
3話術その1:わかりやすい説明を心がける
3話術その2:溜飲の下がるコメント、視聴者がうなずくコメント、奇抜な視点
3話術その3:★せいぜい1分間に詰め込む技術
3話術その4:わずか数日前か数時間前に知らされたテーマに対応する
3話術その5:時事問題が得意なフリージャーナリスト VS.研究室に閉じこもりたい大学教授
4反射神経その1:お笑い芸人並みのクイックレスポンスがどこまでできるか?
4反射神経その2:空気を読むのが難しい少しお茶目な討論番組
◇オーラと強引さのある者だけが生き残る★←どの世界でも同じかも
◇「空気を読む力」と「強引さ」のどちらが重要か?:目立った者勝ち


第六章 コメンテーターの「役割」と守るべき「倫理」;
◇★シニカルな視点も役に立つ←マスコミも学者も同じ
◇守られるべきコメンテーターの倫理とは何か?:1★不偏不党を貫く批判精神、2誰を批判するか、3どこまで責任を持って話すか
◇長持ちするコメンテーターは「煽り」という罪と罰をじっくりかみしめる:個性が重要で、「わかりやすさ」「落ち着きがある」「良心的だ」「真面目な印象」から、「歯切れの良さ」「白黒はっきりした」が重要な要素に


第七章 大手マスコミが嫌われ始めた理由;
◇コメンテーターに同情する人はまずいない:今の時代に客観報道などあり得るか?⇒目線が厳しい理由:1批判潔癖主義、2マスコミ自体の権力化、3政府の犬と化している疑念、4労働条件の良さ、5コンテンツの質の劣化・低下←▲学生時代にジャーナリスト志望だった著者が、厚労省時代に、威張り散らしたり、木っ端役人でさえ責めたり、綺麗で派手な女性記者など国民目線から離れた記者がいたという▲P172
◇ネットが台頭してもテレビ優位は変わらない:★コンテンツの質の高さが最大の理由
◇フリージャーナリストに攻撃される大マスコミ


第八章 「批判」より「独裁」がウケる社会状況;
◇橋下氏のスレスレの言動が受け入られる理由:4つの変容
1閉塞感漂う日本の現状、2冷戦崩壊からコメンテーターの凋落は始まった、3★崩壊する権威と荒れ狂う世論(検察など)、4★コンセンサスを築けない社会(小さな政府の米、大きな政府の北欧、揺れる英など)
◇ハイリスク・実績重視の日本社会:安全志向への風当たり強く公務員バッシングに
◇そして「ホンネ系政治家」が勝ち残った:★強引に決めていくことの必要性を感じているカラ


最終章 テレビコメンテーター業に明日はあるか?;
◇大きな影響力を保持し続けるマスコミ:テレビは、コンテンツが秀逸、検索しないでいいお気楽さ、エンターテイメント性、惹きつける魅力と吸引力、視聴者を無視できず飲み込む存在、視聴率の存在、デジタル化による多チャンネルの実現
◇★もはやマスコミは絶対的な権威とはなり得ない?ネットなど対抗勢力の台頭で、聞く権利の代弁とか公正中立で絶対的は通用せず、メディアの一つに
◇清廉潔白な権力という新しい風
◇「取り上げない勇気」も必要
◇マスコミ関係者の声を聞いてみる:
毎日放送制作局の宗川氏:キーワードはローカル、何が可能かを日々追求できるかどうか。
毎日放送報道局の池崎氏:自分の感覚、センスを大事にし、なぜ今起きているか素朴な疑問から、伝える作業
◇激動する世論にどう向き合うか?:世論という大きな渦にどう対応

 
最後に コメンテーターにも意地がある;


{9/30-10/5読了、記入も同日}