- 作者: 山本眞功
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2013/05/15
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る
各時代・各階層の人々が、危機に瀕した「家」の存続を願い、危機を乗り越えるため知恵のかたまりとして子孫の残してきた「家訓」の変遷をたどることで、扉文にあるように、『この国の特異な姿が見えてくる。明治の近代化とはじつは武家化だった!』と説明している。そして、その結末が、「戦争に明け暮れた後の敗戦」だと問題提起をしている。
その結論に至る本著の論理は一貫しているが、逆に、第六章で明治期における例外として紹介されている第四章の松屋創業者の訓え『古屋家家訓』が興味深い。創業者の徳兵衛が残した7箇条のうち、序文と6条で示されているという「正当の職業を営む者は、必ず 自他の幸福を生ずるものなり」という部分を、著者は現代の企業経営者も噛みしめるべきと指摘しているが、その通りだろう。
家訓の歴史をたどることで、そこに生きた人々と社会の関わりを考察しようという試みは、先に読んだ島田裕巳氏の『7大企業を動かす宗教哲学』と同様、日本の思想史をさぐるうえで、面白いと思った。
{9/1-7読了、記入は同日}