読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

「すみません」の国

タテマエとホンネが違うので日本人はよくわからないとか、曖昧なリーダーシップで戦争責任さえはっきりしないなど、欧米の合理主義と比べてこれまで批判されてきた論点について、著者はあえて、長所だと紹介している。中東で続く紛争状態や世界的な宗教・民族対立によるテロなど考えると。確かにそういう面もあるのかと、気付きを与えてくれた一冊。同じような主張が何度も繰り返されるところが若干気になる点ではありましたが、楽しく刺激されました。
総選挙から年末年始のバタバタで、なかなか本を手に取ったり記録したりすることができず、記憶があいまいになりつつあるなかで、以下、引用すること、「すみません」でお許し下さい。


プロローグ 日本人はいやらしいか;
◇ホンネとタテマエの二重構造は、思いやりに基づく奥ゆかしく美しいのが、本来の姿。
p12:日本文化には、相手の気持ち体面を思いやって、それを傷つかないようにタテマエを用いるといった習慣があるのだ。
p15:本書では、日本を「状況依存社会」と特徴づけ、状況依存的なコミュニケーションの深層構造を浮き上がらせることを試みた。…抽象的な正義とか平和とかいう原理原則よりも、現実的な状況にどっぷり浸かり、目の前の人を思いやる心の構えが、日本というシステムの心地良い均衡を保ってきたといえる。…日本的コミュニケーションの長所を再認識し、その活かし方模索すると同時に、悪しき慣習は自覚的に改めていく。そうすることによって、現代の日本社会に蔓延している生きづらさを、少しでも緩和することができるのではないだろうか。


第1章 蔓延する「すみません」;
◇日本では謝ったり非を認めたりしても過度な賠償責任を求められることなく、個人の責任より「場の責任」という発想で、ものごとを平和に解決する傾向がある。
p45:「すみません」という言葉は、相手を思いやり、「場」の雰囲気を保つという重要な役割を担っているのである。


第2章 日本語は油断ならない;
◇「わかりました」はわかっておらず、「それはいいですね」は拒否で、意見や感受性の違いが際立たないように曖昧な部分を残すため、ぼかした表現を使い、正面切って反対しない。場の雰囲気や関係者同士の人間関係を良好に保つため。
キリスト教徒ではないのにクリスマスを祝い、その一週間後には寺社に初詣、その翌月にバレンタインデー、というのが多くの日本人の姿。
p80:何ごとも突き詰めずに曖昧なままに漂う姿勢に基づく許容性が、自分の考えと矛盾した意見にも理解を示そうとする姿勢、自分と異なる視点をもつ人に対する寛大な態度にもつながっているといってよいだろう。


第3章 言いたいことは言わない日本;
◇人間には気持ちで動く側面があり、気持ちがつながると納得しやすい心理状態に。情緒的な絆のない上司から無理な要求をされたら反発しながら動く一方、絆があれば本気で取り組む。


第4章 いやらしさの裏側;
p133:自分のことで相手を煩わせなくないという思いやり…克己心にもつながるものとして、日本文化の根底に流れている。
◇不平不満を口にしない性向は現状追認の事なかれ主義につながるが、阪神淡路大震災東日本大震災で世界から賞賛された日本人被災者たちの忍耐強さや規律正しさも、同じ性質に発すると言えないか。


第5章 空気が国を支配する;
◇カルフ・ヴォルフレン『日本/権力構造の謎』で、日本に責任者がいない。
p156:日本の政治家-官僚-財界という権力の構造のピラミッドには頂点がない。責任をもって動かせる立場というものがないのだ。
p174:大切なのは、組織の再構築よりも、私たちの意識の改革である。自分たちが状況依存社会にどっぷり浸かって生きていることを自覚し、その長所を活かしつつも、短所による弊害を避けるべく、理不尽な空気に対する抵抗力をつけていくとことである。


第6章 ホンネに敏感な日本、タテマエ主義の欧米;
p197:価値観の多様化や選択肢の増加が現代のモラトリアム心理を生み、それ私たちを「こうあるべき」という縛りから開放してくれた。だが、それによって自由を手にした私たち現代人は、さまざまな迷いを抱えることになった。個性的な生き方が認められる自由な時代だからこそ、自分はどんな風に生きようかと迷うことになる。それが、現代人の生きづらさにつながっている。
p208:イヤと言えないというのは、相手の視点に立つことができ、相手の視点からものを言おうといった優しい気持ちのあらわれと言える。
p215:論理的一貫性をもとにした主義主張のぶつかり合いが、異質な人間同士-文化同士の共存を危うくしている今日、日本的な曖昧さや緩さが何らかの貢献をする余地があるのではないか。

エピローグ わかりにくさの深層に;



{12/29読了、記入は1/3〜5}