読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

「通貨」で読み解く世界同時恐慌

ミスター「円」の異名をとる著者が読む今後の経済動向。欧米は構造的に没落し、中国やインドがかつてのように世界経済に大きな地位を占めていく中で、円高ドル安の傾向は変わらず、むしろ日本はこれを活用して、長所を伸ばしていくべき。バランスシートから、国の財政は借金が多いとはいっても、すぐにギリシャのようにはならないが、将来を考えると消費税の引き上げは必要で、今後、高負担で福祉社会をめざすべき、というのが著者の主張か。大蔵省の高官をされていただけに、財政の在り方の一つの方向を示していると言える一方、小さな政府をめざして改革を進めてきた考え方もあると思うので、これはブレながら将来に向かっていくということなのだろうか。論理や主張はとてもわかりやすい。が、何が正しいのか、については、さまざまな見方・考え方を知ったうえで、判断をしていく必要があると思う。


(目次ー引用)
プロローグ 世界同時恐慌の足音が聞こえる!;
p18:2012年、世界同時不況が世界同時恐慌になる!?(欧米の金融危機と、中国やインドでの調整局面での下落がバブル崩壊へ)
p22:「円高は日本の国益である」という発想の転換が必要だ


第1章 ドルとユーロの没落で、世界同時恐慌に突入する!;
p38:世界同時不況の根本的な問題がフローではなくストックの問題であり、起こっている事態がバランスシート不況だからです。
p67:欧米の問題は、どちらも一時的な落ち込みではなく、「構造的」な問題です。


第2章 「元」と「ルピー」は、世界的な経済危機を救うことができるか;
p77〜実質は巨大な官僚機構がルールに従って動いており、ルールを逸脱する無茶はしないというのが、中国の政治なのです。…単独政権を長く続けてきた日本の自民党と、実質的に同じような政治システムになると思います。
p86:元は次第に切り上がり、20年以内に自由化される!
p103:過去数千年の歴史をふり返れば、ほとんどの時期に世界トップの経済大国は中国で、第二位がインドでした。…19世紀はじめには、中国とインドで世界のGDPの半分を占めたわけです。


第3章 「通貨」がわかれば、世界経済が見えてくる;
p110:外国為替市場で国際社会における相対的な価値が決まる通貨は、その国の国力を背景に持っておいる、と考えることができます。
p130:金自由化の狙いは…当時を振り返ると、自由化で何かを実現するという狙いがあったというより、まさに自由化そのものが目的だったのです。
←この一文は、少し失望した部分。手段が目的になるようでは、大局は見通せないのではないだろうかと感じた。


第4章 円高ドル安・ユーロ安!どうなる?日本経済;
p196:いま最も重要なのは、円高を利用しておカネを海外に出し、どんどん攻めていくことです。
←最近報道された、ソフトバンクの米3位の携帯企業を買収するというのも、この流れか?
p200:ごく大雑把な数値を示しておくと、日本のGDPは年500兆円、借金は倍の1000兆円、国の予算(歳出)は年100兆円、国の歳入(税収)と新規国債発行額の合計も年100兆円で、税収が40兆円なら、国債発行は50兆円以上(不足分は基金取り崩しなどで調達)となります。
p202:家計の資産が大きい日本は、まだ金持ち国家である
p204:余裕はせいぜい200兆円台ですから、国債50兆円を10年出し続けることはできません。現在5%の消費税を、4〜5年以内に引き上げるしか、日本に打つ手はありません。
p299:このままアメリカ型の小さな政府を維持するのか、あるいはヨーロッパ型のフランスやドイツのようにある程度大きな政府を目指し、福祉を充実させるのか。日本はそんな選択を迫られていると思います。これが私のいう曲がり角です。
p212:大切なのは高福祉を先に提案し、ある程度実現することです。高福祉を実現してから、高負担を求めるのです。
←この点も、理念として理解できないわけではないが、今の財政状況と社会情勢の中で、現実的かどうかは疑問と思った。


エピローグ成熟国家のメリットを生かそう;
p213〜日本の強みは「環境」「安全」「健康」にある:…経済のモノからヒトへの転換とも、ハードウェア中心からソフトウェア中心への転換ともいえるでしょう。…この三つの分野で、日本は世界を断然リードしています。
p222:そんな固定観念(←悪い円高)を捨て、攻めの円高戦略や成熟国家としての成長戦略を掲げて、力強い一歩を踏み出すべきときが、現在ではないでしょうか。


{109-10読了、記入は13}