読書録

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震災復興 欺瞞の構図

震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)

震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)

この本が上梓されてから1年、政権が交代したものの、震災復興に向けた構造や課題は、基本的には変わっていないようにも思える。

著者は、『東日本大震災で被災した人々を直接助ければ4兆円の復興費ですむ。個人財産を政府の費用ですべて復旧したとしても6兆円ですむ。19兆円から23兆円と言われる復興費もいらないし、そのための10・5兆円の増税も必要ない。にもかかわらず、なぜ震災復興に巨額の効果のないお金が使われるのか。それは政治が、人々を政治に依存させようとしているからである』(p188 終わりに)という基本姿勢で、その理由や背景を細かく分析して提示している。日本人の一人あたりの物的資産が966万円として計算したり、原発事故関連の費用を除外したりするなど、前提としていかがなものかと思う部分もある。かつてある番組で、復興予算がいかに関係のない事業に使われているかを紹介していたことも思い出しながら、こういう論点はあるのだろうとは思う。しかし、個人補償だけではすませられない部分もあると考えられるので、どこまで現実的な議論なのか、この本を読んだだけでは判断できなかった。何が正しいのか、わかりにくい世の中であることを実感できる一冊ではあった。


(目次ー引用)
序論 人を助ける復興策とは?;
p10:無駄な復興策と必要のない増税を食い止めることが私の望みである。


第1章 大増税の口実に使われる大震災;
◇震災復興予算が最終的に23兆円とすると、被災者1人当たり4600万円をかけることになるのはおかしい。


第2章 過去の震災復旧対策の浪費ぶり;
◇浪費だった神戸市長田区のプロジェクト
◇コスト感覚が欠如した復興計画


第3章 政府や県が無駄遣いに積極的な理由;
◇巨大な公共事業はお金と時間がかかる。
◇震災復興策は、票田を維持するための利益誘導策として、経済効果の低い、予算の消化を自己目的にした事業になる。
◇創造的復興よりも個人の生活、生産基盤の復活にお金を使った方が良く、素早い復旧が可能となる。


第4章 最も安上がりで効果的な復興策;
◇リスクとリターンの関係を考えない公的部門が新しい産業を起こすことなどできるはずはない。
p114:私の主張は、より速い、より効果的な復興は、個人財産の復活の援助になるということである。


第5章 過去の大震災に学ぶ;
◇震災復興で6つの論点:1.資産と負債の関係で債務の処理を考える、2.デフレ・円高にならない、3.復興資金の一時的な経費は国債で、4.震災前と同じ私的資産と社会インフラを建設すべきか否か、5.国が私的財産の再建に援助すべき、6.債権の具体策は集権的ではなく分権的に


第6章 原発事故の教訓;
◇コストが安いなら安全対策にかけるべきで、様々なアイディアと技術を持った人が電力業に自由に参入できるようにする。


終わりに; 
◇将来の高齢化に備える必要があり、公的部門に頼るとギリシャの悲劇になる
p191:東日本大震災によって、被災した地域はますますギリシャになろうとしている。この流れを逆転させ、日本の政府を、自立しようという人々を助ける政府にしなければならない。


{1/28-31読了、記入は2/1}