読書録

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311情報学 メディアは何をどう伝えたか

311情報学――メディアは何をどう伝えたか (叢書 震災と社会)

311情報学――メディアは何をどう伝えたか (叢書 震災と社会)

インターネットで大量の情報が発信された一方、「一面的で不完全な情報しか提供できないテレビ局への信頼は失墜し」(p3)、マスコミからネットへ移行する動きが加速していったという現状認識は、参加した研究者がこれまでの手法では、「目の前で起きている事象をとらえる上ではほとんど役に立たないという無力感」(p123)を感じたという苛立ちがあったためだろうか。デジタル・アーカイブという手法を使うことで、新たな境地を切り開こうという試みがあることは、本著で初めて知ったので、「想・IMAGINE」という情報検索の手段を、利用して見たい。
著者らが一致してめざす「インフォームド・コンセント型の情報社会の実現」というイメージは、つかむのがなかなか難しいようにも思った。


第1章 311情報学序説(吉見俊哉
◇5つの情報圏:1日常生活圏、2マスメディア圏、3インターネット圏、4専門家圏、5行政機構圏、重層として捉える視点が必要
◇311をめぐる記憶や情報の共有化と活用で「新しい公共的基盤の構築」


第2章 311情報学の試み(三浦伸也)
◇技術の進化で、観たい番組は録画して後で観るスタイルに。リアルタイムは必要性が高いニュースに限定
◇NIIテレビアーカイブシステム(字幕)で言葉の量的な分析
◇報道される南三陸町とメディアに登場しない山元町で情報格差⇒山元町で臨時災害放送局りんごラジオが大きな役割を果たす
◇防災分野では、平時の地域のネットワークを含むソーシャルキャピタル(地域力)が復旧・復興のスピードと関わることを実証
◇哲学者・鷲田清一『東北の震災と想像力』p111〜人々はインターネットで自分の欲しい情報を容易に探求できるようになりました…視聴者がテレビ報道からじわりじわり離れていくのも不思議ではない。人々が求めるメディアは、分権的・ネットワーク的なそれに移行しつつある…地域社会のなかで起こっている人々の、地味だが自発的な活動の動きに関心を寄せつつある
◇量的分析の限界と質的分析の必要性


第3章 共同討議 震災現場から見たメディア環境の変化(司会/伊藤守)
◇研究は、ナショナル・ローカル・グローバルな視点と共にアーカイブの視点を入れることが重要
◇被害の深刻さと報道量は、いくつかの地域で顕著にアンバランス
◇情報に対する知的所有権の考え方を変えて、公共化する仕組みを考える⇒地域発展の新たなソーシャルキャピタルになっていく(のど自慢は地域で観ることができるようにする)


第4章 311情報学への挑戦(高野明彦)
◇日本の報道と海外の報道のあまりに大きな隔たりが衝撃
◇「直ちに健康に害があるとはいえない」という報道姿勢は、患者本人に病名や病状を説明するインフォームドコンセントを頑なに拒否する医師や家族のよう
◇コミュニティの記録は、そのコミュニティの成員たちの手で行われるべき+役立つようにすべき
 

{2/2読了、記入は2/9}