読書録

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人口激減

人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)

人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)

著者は国際交流のスペシャリストとして、人口減少化社会の劇薬として移民受け入れ、たとえリスクがあったとしても、その労働力や多文化パワーによる活性化、経済的効果は計り知れないと議論を進める。英国のウィンブルドン現象(経済用語:外資が幅をきかせ地元企業が落目になるが市場は隆盛を続ける)やアメリカをはじめ世界各国で優秀な人材を受け入れることによる社会の活性化と成長、それに国内における相撲での外国人力士の活躍や、山形県朝日町(うめちゃんキムチ本舗)や岡山県加茂川町、ミャンマーカレン族を受け入れた千葉と三重の事例などを紹介。最後は梅原猛氏の「聖徳太子」を引用して、「和をもって貴しとし」は異文化を受け入れるかどうかをめぐって深刻な対立が繰り返されたことの知恵であり、その対立を乗り越えて、国外から知識と文化を導入することで進歩してきたのだと説く。(p188)

本著では、移民受け入れが日本再生のカギになるような未来予測も展開しつつ、反対論についても分析している。反対の理由で多いのは以下の3つ(p59〜)で、ネットでも、アジア近隣諸国への批判や外国人を犯罪と結び付けて考える意見が多く、「移民」ということばが、感情的な反発や排外的な愛国主義的反応を引き起こしていると指摘する。
1.犯罪の増加の懸念
2.欧州のような暴動の可能性
3.日本文化の維持に支障

また受け入れを拒む心理として以下をあげる。(p66〜)
1.外国人は社会に害をもたらす
2.同質性を保持したい心情
3.日本の将来への危機感の欠如

著者はこうしたマイナス面より、消極姿勢を続けることにより世界から取り残されることになり、慶応大学の後藤純一教授の100万人の移民受け入れで8兆円の経済効果(p151)や、外文化パワーを活用して地域社会の活性化につながった例を紹介したうえで、外国人受け入れ成功の条件として、以下の4つを提示する。
1.定住を前提に日本語を学ぶ意欲のある外国人を受け入れること
2.成人には日本語教育、子どもには学校教育を徹底すること
3.借金を背負った移民を受け入れないこと
4.地域社会が受け皿となる覚悟と意欲を持つこと

著者が主張する『外国人のもたらす「異文化」を日本のパワーとして取り込み、それをもって再生を図る』(p190)という面は、確かにあると思う。国技の相撲ですら受け入れているのだから、議論を通して、少しでも前に進むことができるのではないだろうか。

{3/5-10読了、記入は同日}