読書録

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体制維新ー大阪都

体制維新――大阪都 (文春新書)

体制維新――大阪都 (文春新書)

「近いうち」で合意した総選挙で最も動きが注目されている橋下大阪市長(前府知事)が、堺屋太一氏との対談も含めながら、自身の「大阪都」構想について熱く語っている。大阪府大阪市の二重行政ではムダが多く、また区が基礎自治体として機能していないので、この体制を変えることで、世界の都市間競争に打ち勝ち活性化していく、というのが大筋か。あとがきで、“独裁的”と批判されることにも言及して、それでも改革はやっていくと改めて決意を述べている。

以前、菅直人元総理の著作で、制度のことを中心に書いていて、結局、実際はどうだったのかと考えたが、橋下市長も制度・体制のことは書いているが、それが実際にどうなのか、活性化につながっているのか、情報を持ちあわせていないだけに、そこはよく見ていく必要があると思う。ムダを省き活性化というところは、横山ノック知事の時代にも、財政再建団体転落を防ぐために「痛みの伴う改革」と訴えていただけに、方向性としてはわかる。ただ、手法として、維新の会で多数をとり、府から市へと転じて強引に進めていくというのが、今のような時代、受けるのか、はたまた、危ういのか、悩ましいと感じる。さらに、ここ数日の報道で出ていた、教組の教研集会に学校を貸さない、安倍元総理と連携を図る、という面では、これまでの行動論理を含めて、イデオロギー性が極めて強いように思える。

一方、国政の場で、リーダーシップを発揮できる人物があまり見当たらないという雰囲気の中で、橋下市長の率いる維新の会が国政を狙う場合、この新書を読む限り、支持は相当広がりそうな予感がする。

本著からの引用をいくつか。注釈ないものは橋下市長。

p22:堺屋太一:20年間「下り坂」の続く日本ー人を替えても(政権交代)、仕方を変更(政策転換)しても良くならない。これを救う道はただ一つ、体制(システム)を変えることです。
(p249:府と市の問題は「府市せあわせ(不幸せ)」と万博1965考え始めた頃から)


p98:僕は仕組みを変えるのが政治家の一番大事な仕事と考えています。


p115:政治家の役目は、一定の方向性を示し、その実現に必要な人やお金の配置をし、組織が機能する環境を整え、組織が動かなくなる障害を取り除くといった組織マネジメントをすることです。
→前面に出るところと行政組織に任せる線引に神経を尖らすp117
→2年間は幹部あてにメールを昼夜問わず出し続けたp120


p141:行政は、継続性、安定性、公平性、論理的整合性に…信じられないほどこだわります。


p160:「大阪都構想」は政治の目的ではありません…目的は、前述した、世界レベルの都市間競争に打ち勝つこと、住民に近い役所を中心に、大阪市内のコミュニティの再生を図ることです。


p187:お金のかかる高度で大規模な施設は、広域の住民全体の負担で広域行政体が造り、そして住民に身近な施設は、その基礎自治体の住民負担で基礎自治体が造る。こうすることで機能的なすみ分けができ、二重行政が解消され、税の無駄遣いが抜本的になくなります。


p212:日本の行政機構、行政システム・体制を、決断・決定できる仕組み、そして責任の所在がはっきりする仕組みに変えなければなりません。日本全体で抜本的再構築をすることが日本沈没を防ぐために喫緊の課題であるのですが、それは大変な作業で、日本全体で凄まじい権力闘争となるでしょう。では大阪からやってみる。これが大阪都構想の挑戦です。


{8/6-12読了、記入は8/16}