読書録

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老人性うつ

老人性うつ (PHP新書)

老人性うつ (PHP新書)

『テレビの大罪』以後、著者の本はちょっと遠慮していたのだが、本著でも思考に影響を与えるとしてテレビ批判が垣間見えるところがあった。そこまでテレビのせいにしなくてもとも思うのだが、お年寄りの体と心の変化、およびどう対応したら良いのかを、わかりやすく紹介していて、著者の専門分野だけに本領を発揮されている。

『臨床老年医学の本質』(マグロウヒル)によれば、高齢者に現れやすい症状として、(p107)
最初に混乱、続いてうつ、その後に失禁、動けなくなる、心臓病と続くが、症例としては、精神的なものが上位をしめ、この「混乱」を引き起こすのが、認知症、せん妄、うつ、の3つのDで、注意を呼びかけているという。そして著者は、この3つを認知症としてしか捉えないところに問題があると指摘している。そして、高齢者はうつの領域に陥りやすく(p66)、いかに早く発見し、いかに適切な治療を行えるかが課題になっており、「うつ病を早く発見すれば、それだけQOLの高い生活が維持できる」(p181)を繰り返し述べている。

また、うつは生物学的な病気で脳の健康状態に左右されるとして、「脳にいい暮らし」を心がけることが重要だとして、廊下の変化をまとめて以下のように説明する(p208)
前頭葉の変化(萎縮)
セロトニンなど神経伝達物質の減少
・脳の動脈硬化
・男性ホルモンの減少
こうした変化を防ぐには、先に読んだ南雲さんの本と共通するが、生活習慣に気を配ることが重要になる。ただ、南雲さんは肉は良くないというが、和田さんは、コレステロール値が高い人の方がうつ病にかかるケースが少ない(p211)として、メタボ対策そのものにも否定的なのだが、さて、こちらはどちらが正しいのだろうか?タバコにもあてはまりそうなのだが、あまりにストレスを貯めこむことのほうが、寿命を短くしそうだという解釈では、この点では、和田さんの主張の方に軍配をあげたい。(単に肉を食べたいだだけかも)

また、本著では、「グレーゾーン思考」についてのススメがいくつか出てくるが、生き方としても好ましいのではないかと共感を覚えた。

p177:「認知がゆがむ」と自分自身に対して否定的となり、将来も絶望的な方向に考えてしまうのだ。…認知療法では、こうした白か黒か、善か悪かの「オール・オア・ナッシングの思考」ではなく、何にでもグレーゾーンがあることを認められるように、働きかけていくのである。…日ごろから「心にいい考え方」を習慣にすると、うつ病になりにくいし、かかってもそれほど悪くならないのである。

p195:白と黒の間にグレーの部分があるのを認められるようになることを、専門的には「認知的に成熟している」と呼ぶ。…グレーの程度によって、ものごとを柔軟に考えられることを「認知的成熟度が高い」という

ここで再び「テレビメディアが日本人の認知的成熟度を下げているという問題」ということが出てくるし、以下の点もあげてテレビが心の悪いと主張するのだが、それこそ幅は広いグレーゾーンがあると思うのだけれど・・・

p218:二分割思考を止めるだけで、うつの予防効果があると考えられている。(p219)そのほか、
・相手の心のなかを勝手に決めてしまう「読心」
・将来のことを勝手に決めてしまう「占い」
・ちょっとしたことでを大事と考えてしまう「破局視」
・一つ悪いことがあれば、全部悪いと思うような「過度の一般化」
・かくあるべし、こうでないといけないという自己規範、自己規制が強すぎる「should思考」などは心に悪い考え方とされている。…だから私はテレビがコオロに悪いと思うのだ。

どうも決めつけは良くないので、最後に著者が呼びかける「高齢社会をよりよく暮らすためのコツ-心のホームドクターをもとう、ということは、心にとめておきたい。

{7/13-16読了、記入は同日}