読書録

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電子書籍の衝撃

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

iPADやスマートフォン商戦が熱を帯びる中、電子ブックの将来についても注目が集まっている。そうした中でタイムリーに出版されていた本で、これまで著者が提示してきたプラットフォームなどの概念とともに、基本的には”楽観的”に描いている。というより、既存メディアはこのままでは生き残れないということか。
それにしてもカタカナ概念言葉が多いけど、こういう紹介の仕方が、「マイクロコンテンツ化」の一例にもなるんだろうか?本著で紹介されている『まつきあゆむ』さんを知らなかったし、『スゴ本』も接したことがなく、ネットの世界にはまだまだ馴染んでいないんだなあ、とも感じた。


ネットに詳しい著者の結論としては、「はじめに」の対としてp300〜
キンドルやiPADのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット
・これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム
・電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと本のフラット化
・そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界
によって円環が完成して新しい生態系が全容を現し始めていると評価する。


このまとめにでてくるプラットフォームやセルフパブリッシングなどの用語が、順次解説されていく内容となっている。


iPADは刊行時点は未発売ながら、キンドルと比べて不利な点としてp41〜
1.サイズと重量、バッテリーなどのスペック
2.バックライト付きの液晶だと目が疲れやすい
3.価格が高い
←現在、キャンペーン中なので、ついつい手をだそうかどうか悩んでしまう・・


用語についてのメモ(iTunesが起した現象→音楽が本にも)
p44:音楽のアンビエント化=環境とか偏在・・取り巻いて漂っているような状態に
p52:マイクロコンテンツ化=バラバラに細分化・断片化されて流通する
p80:プラットフォーム=地主と小作人の地主


プラットフォームとして市場を支配するために必要は三つの要件p83〜
1.多様なコンテンツが安く豊富にそろっていること
2.使い勝手が良いこと
3.アンビエントであること


既存のメデイアのパワーはインターネットの登場によって失われたp104〜
「需要を絞る」ということによって余剰の富を得ていた古いメディア企業が没落していくのは当然のこと


p162〜「記号消費」ジャン・ボードリヤール1970年フランス哲学者:社会的ステータスとして買い求める
1980年代の日本で頂点に達し「モノ語り」現象←大平健『豊かさの精神病理』で提示
1990年代には、総中流社会が長引く不況で崩壊し格差社会に+サラリーマンと専業主婦と子ども4人の標準家庭が少数派に
2000年代に「モノで自己表現する」といった思考の消滅→マスメディアの広告パワーが失われる


p177〜ソーシャルメディア時代を生きるスキル「未来のジャーナリスト」
1.的確なタイミングで的確な内容のコンテンツを的確なスキルを駆使し、多様なメディアから発信する能力
2.多くのファンたちと会話を交わし、そのコミュニティを運用できる能力
3.自分の専門分野の中から優良なコンテンツを探してきて、他の人にも分け与えることができる選択眼
4.リンクでお互いつながっているウェブの世界の中で自分の声で情報を発信し、参加できる力
5.一緒に仕事をしている仲間たちや他の専門家、そして自分のコンテンツを愛してくれるファンたちと協調していく能力


p184〜セルフパブリッシングは出版をいかに変えるか?(音楽では『まつきあゆむ』さんの例を紹介)
1.ソーシャルメディアを駆使して書き手が読者とダイレクトに接続する環境が生まれ、空間がひとつの「場」となっていくこと
2.電子ブックによってパッケージとしての紙の本は意味を失い、コミュニティの中で本が読まれるようになっていく
3.セルフパブリッシングの世界では大手出版社かどうかは意味がなくなり、中小出版社でも個人でも購読空間の中で同じようにフラット化していくこと
→出版社の二つの方向 1.書き手との360度契約 2.スモールビジネス化


p235〜日本の出版業界は「ニセ金化現象」で自転車操業的な負のスパイラルが延々と繰り返される無限地獄に
→売れない→返本が増えるぶログに→取次に返金する必要→本を出し続けて返金で赤字にならないように→ますます刷る→


p248〜書店の中にコンテキストをつくった往来堂書店、安藤哲也さん
←ファザーリンク・ジャパンの代表で、カリスマ書店店長とか書店業界の救世主と言われていた


p266〜「マイクロインフルエンサー」=自分にとって最も良き情報をもたらしてくれる人→情報はfollowerへと流れる
→例『カイト・ランナー』2003米小説、渡辺千賀さんが日本ではブログで初めて紹介→『スゴ本』ブログに誘導されて感動、購読するようになる


p296〜批評家・東浩紀氏と作家平野啓一郎氏の対談「情報革命期の純文学」
→批評というのは、自分で自分が読まれるコンテクストを演出していく表現だということ


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