読書録

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腐った翼

腐った翼―JAL消滅への60年

腐った翼―JAL消滅への60年

映画『沈まぬ太陽』では、会社再建に心血を注いだ国民航空会長の国見正之会長を石坂浩二さんが演じて、この時に軌道にのっていればという思いがした。しかしこの本を読むと、鐘紡会長だった伊藤淳二氏については「罪」という章で書き、また主人公のモデルと言われる日航労組委員長の小倉寛太郎とともに労使協調路線をとったことに極めて批判的だ。ノンフィクションライターの著者の作品は、今回が初めてだが、当時から取材にあたっていたような書き方で、信ぴょう性を感じさせる。山崎豊子氏の小説と映画には、主人公に思い入れをしながら鑑賞したが、いったい真実はどうなっているのか、読み解く能力が問われているのかも知れない。

なお、著者はJAL問題は、経営陣が政財界の利権構造やいきあたりばったりの航空行政に翻弄されてきた面が否めないものの、経営破綻の最大の要因は、JAL経営陣たちの資質(p18)と指摘している。本著の流れも、派閥と人事抗争、組合対応など経営陣の動きを軸にストーリーが展開していくが、組織風土の問題も大きいように思う。なぜ破綻せざるを得なかったのか?長期為替予約や燃料ヘッジの財務処理の問題が、2000億円規模の損失を出していた(p237)というのは、アメリカのエンロン崩壊のことも思い起こさせる。

エピローグで紹介されている御巣鷹山の事故で、「パパは本当に残念だ」「本当に今迄は幸せな人生だったと感謝している」52歳の河口博次さんの言葉は、胸を打つ。


(目次ー引用)
第1章 米航空支配からの脱却;

第2章 伊藤淳二の罪;

第3章 封印された簿外債務;

第4章 JALと自民党

第5章 クーデター;

第6章 不発に終わった決起;

第7章 最後の転機;

第8章 庶民派社長の限界;

第9章 倒産;

第10章 翼は腐っていた;


{1/6〜1/8同日記入}