読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

鈴木さんにも分かるネットの未来 岩波新書新赤版 1551

 ドワンゴから、スタジオジブリ、KADOKAWAにも関わり、ネット界で著名な著者が、ジブリ鈴木敏夫プロデューサーから依頼され、タイトルにあるような形でネットの未来像を縦横無尽に語っている。発刊から3年、変化の激しい時代に、どの方向に向かっていくのか?今の状況に照らしながら当時の予測を比較して考えることもできる。

 「IT舶来主義」や「デジアナ世代」など、繰り出される造語に基づいた解説も興味深いが、冒頭にもってきたのは、ネットツール派とは違う日本独特なネットに住む「ネット住民」の存在。ネット発の文化は、この層が厚いことから世界の他の国を凌駕していると分析するp25。劣等感と優越感の説明で「リア充と情報強者」および、否定的に使いたい場合のDQN(どきゅん)p30など、知っているようで知らないこと多々あり。

 マスメディアのビジネスが危機を迎えている根本的な理由として、「p47:独占していた情報の流通経路がネット企業に奪われ、情報の発信者としては個人とすら競争しなければいけないという完全自由競争の中に放り込まれたからなのです」と指摘する。

 さらにネット世界特有のイデオロギーとして、「ネットを通じて世界をよくしていこうという理想」p55があり、これは人類史上の革命に立ち会っているという認識があり、平等かつ無償で享受できるべきというp56理想が話をややこしくしているとする。そしてソーシャルメディアは進化した口コミで、マスメディアへの対置というより、新しいタイプのマスメディアの一つと考えた方が妥当じゃないかというp59。堀江貴文さんや津田大介さんなど有料メルマガだけでビジネスを成立させていることも指摘するp66


 
発刊した岩波書店のサイト⇒ https://www.iwanami.co.jp/book/b226338.html



 面白い内容が多く、たくさん引用したがそれも許されることではないと思うので、今後の予想について、いくつかを下記にメモする。

◇コンテンツ自体を独立したプラットフォームとして設計しなければいけないp111、定額使い放題モデルはその売上を利用して、自ら差別化できるコンテンツをつくり出すようになっていくp122

◇当分の間、ITのオープンからクローズドへの流れは止まりそうにないp149

◇近い将来、国家がネット上に国境をつくろうとする動きが起こると予想p164

◇テレビが果たしている機能でのVODの要素が強いものはネットサービスで置き換えられるが、逆にライブストリーム系の要素が強いものは、テレビがまだまだ優位性を保つp231(4700万世帯で3000万が同時にみている場合、回線が足りないp236)

◇ネットで話題になることの多くはテレビの人気ドラマだったりテレビで報道された事件・・このテレビの特別のポジションが続く限り、ネット時代でも最大の広告費を集める・・同時体験を与えているということで、多チャンネル化は注意が必要p245

◇テレビの広告モデルをネットにも持ち込むことがうまくいけば・・テレビ番組のネット同時放送をいずれは実現しなければいけません。CMも一緒に配信するということを徹底すべきp247いずれ一緒になるから



 さまざまな論点があり、ビットコインについては否定的な見方も掲載されているが、ラストでは、ネットとリアルをこれまでのように別々で考えるのではなく、融合を意識しながらやっていかないと通用しない時代になってきたという趣旨が書かれているが、その通りだと思う。にしても、周りにはネットに否定的な考えの方々も多く、悩ましい。引き続き注目していくしかないと思う。


{2018/7/15-10読了、記入は7/16月祝}