- 作者: 玄田有史
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/10/21
- メディア: 新書
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この新書は、中高生にもわかりやすく説明することを心がけているようで、挿入されるエピソードなど自身の思いや失敗についても書かれ、好感を覚える。
ただ、語り口の優しさに比べて、この内容は、経済学なのか心理学なのか社会学なのか、きわめて学際的で、どう理解したらよいのかと戸惑うところもある。
p214~で、希望学で学んだ「希望をつくる」ヒントを列挙してくれていて、本著の大筋がここに集約されている。
1.希望は「気持ち」「何か」「実現」「行動」の四本の柱から成り立っている。希望がみつからないとき、四本の柱のうち、どれが書けているのかを探す(39頁)
←Hope is Wish for Something to Come True by Action(p37)
2.いつも会うわけではないけど、ゆるやかな信頼でつながった仲間(ウィーク・タイズ)が、自分の知らなかったヒントをもたらす(86頁)
←希望を持っている人の特徴として、職場を離れた友人・知人が多いことがわかった(p84)
3.失望した後に、つらかった経験を踏まえて、次の新しい希望へと、柔軟に修正させていく(107頁)
4.過去の挫折の意味を自分の言葉で語れる人ほど、未来の希望を語ることができる(112頁)
5.無駄に対して否定的になりすぎると、希望との思いがけない出会いもなくなっていく(128頁)
6.わからないもの、どっちつかずのものを、理解不能として安易に切り捨てたりしない(153頁)
←むしろ「わからない」からおもしろいと思えるかどうか(p162)
7.大きな壁にぶつかったら、壁の前でちゃんとウロウロする(200頁)
←遊びがあってはじめて偶発的な出会いや発見が生れます。遊びのある社会こそ、創造性は生れますし、希望も作り出せるのです(p208)
8.「 」→自身の経験から自分なりのヒントを書くよう呼びかける。
このまとめにない部分で、p70~に、『希望の有無に影響を与えているのが、「年齢」「収入」「健康」の要因をあげ、みんなが希望を持てる社会に必要なことは、誰もが300万円以上の年収を確保できる社会をめざすこと(p75)、平等社会のほうが多くが希望を持ちやすい社会・・所得再配分機能を強めた税制や社会保障制度を実現することが、希望の多い社会を生むでしょう』という見解が述べられるのだが、この部分については、おそらく池田信夫氏的立場からは批判の対象になるだろうと思われる。
”希望”のどういう側面をどう分析していくのか?厳しい社会になってきただけに、この分野の深化を期待したい。
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