読書録

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「分かち合い」の経済学

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

「分かち合い」の経済学 (岩波新書)

「はじめに」に書いてある『「奪い合い」を「分かち合い」に。そうした行動を求める能動的希望の書が、本書である』というのが主旨で、小泉内閣の進めた新自由主義を競争原理として批判し、スウェーデンフィンランドなど北欧をモデルに改革を進めよと説いているのは、民主党菅首相が主張する政策のバックボーンになっているように思う。

格差や貧困が広がる今の日本は、新自由主義の「改革なくして成長なし」=「貧困なくして成長なし」を進め、失業と飢餓の恐怖を復活させ、それを鞭に経済的活力を高めることにあったと分析。
また、フィンランドでは他人を信頼するという人が7割に対して日本では3割り程度という調査結果を紹介し、人間の絆の衰退が社会的かつ経済的危機をもたらしている。

これを変えるには、スゥエーデン語の「オムソーリ(社会サービス)」と「ラーゴム(ほどほど)」という二つの言葉を導き星に考えるとし、「分かち合いの経済」を主張する。そして「知識労働」を中心とした社会になることを目指す。

また、日本は決して大きな政府や平等社会だったわけではないとし、むしろ、家族や共同体が担っていた生活保障機能を、対人社会サービスとして提供してく必要があるとする。

そして分かち合いの社会の原理として、1.存在の必要性の相互確認、2.共同責任の原則、3.平等の原則、の3つをあげる。

p119:工業社会から知識社会への転換する「危機の時代」には、「分かち合い」を小さくするのではなく、再編成することが必要とされている。というよりむしろ、「分かち合い」を強化することが必要となっている。

p159:二極化する労働市場を克服するための基本戦略は、三つの同権化を実現することだといってよい。三つの同権化とは賃金の同権化、社会保障の同権化、労働市場参加の同権化のことである。

p166:黄金の三角形→労働市場の弾力化、寛大な生活保障、アクティベーションつまり積極的労働市場政策という活動保障の三極から成立するフレキシキュリティ戦略

p185:知識社会への三つの政策的戦略→1.人間の人間的能力を高めること、2.人間の健全な生命活動を保障すること、3.社会資本の培養

本著で主張されることは、そのまま実現できれば素晴らしいと思うが、なかなかそうはいかないのが日本の実情。何を目指していくのか?

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