- 作者: 島田裕巳
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/01/28
- メディア: 新書
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葬式費用が231万円(2007年 日本消費者協会)で世界一の日本では、本来の仏教とは関係のない「戒名」「法名」に高額が支払われる実態などが、豊富なデータで紹介されているほか、これまでの葬儀の歴史と宗教との関わり、時代の変化と今後の方向性など、とても分かりやすくまとめられている。
p6:いちばん大切なことは、納得できる葬式をあげることだ。あるいは反対に、納得の上で、葬儀をしないこと、または簡略化することである。
「直葬」(仏教界はじきそう、葬儀業者はちょくそう)など、金のかからない葬儀が増えてきた背景には、「家」の重要性が失われたという事態が関わり、冠婚葬祭が家の儀式から個人の儀式へと変化してきた中で、盛大に行う必要性も失われてきたという。
戒名の具体的なつけ方や相場などが詳しく説明されているのも興味深かった。死後の勲章として高度成長期にインフレ化し、葬式も贅沢になっていったという分析もよくわかる。その一方で、こうしたところで金を集めないと、檀家が減っていくなかで寺が経済的に成り立たない実態というのも紹介され、仏教界に対して、檀家になることの意味を明確にしてそれを伝える必要性が指摘されている。
また、葬式の簡略化は時代の変化から避けられないとし、「核家族化や高齢化ということが、従来の形式の葬式を意味のないものにし、新しい形式の、より合理的なものを求める傾向を生んでいる・・・多くの参列者を集めるような葬式は少なくなっていくに違いないp151」と見ているが、日本人は「お墓参り教」として先祖を大事にする感覚が強いと指摘し、最後に残るのが墓の問題で、解決は難しいとする。
p183:最期まで生き切り、本人にも遺族にも悔いを残さない。私たちが目指すのはそういう生き方であり、死に方である。それが実現されるなら、もう葬式がどのような形のものでも関係がない。生き方とその延長線上にある死に方が、自ずと葬式を無用なものにするのである。
宗教に詳しい著者が、背景を含めて説明している「葬式のあり方」。現実的には菩提寺があり檀家であることは著者曰く「贅沢」なわけで、その一方でそこから離れて生活しているなかで、どう自分で選択していくのか、考えさせられました。
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