読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

極北クレイマー

極北クレイマー

極北クレイマー

財政再建団体になった夕張市を思い起こさせるような設定の「極北市」にある市民病院を舞台に、産婦人科医の医療ミス、厳しい病院経営、病院評価のあり方、メディアの伝え方への批判、研修医制度と大学への派遣医師の引き揚げなど、最近聞いたことのある医療を取り巻く問題が、これでもかというぐらいに盛り込まれている。

著者の持論になっているAI診断については、今回はやっていればという程度で、大きくは出てこなかったが、これまで他の本にに登場してきた姫宮が水戸黄門のような出方をしたり、不定愁訴外来や救急救命センターの速水がちょっと顔を出すなど、ファン向けに嬉しい演出がある。きっと西園寺さやか関連も、何かの話とつながっているのだろうけど、すべてを読んでいるわけではないので、これからの楽しみとしておこう。

主人公の今中医師や後藤医師、室町院長、平松事務長など、登場人物のキャラクターもそれぞれたっていて、一気に読めてしまう楽しさがあった。話の展開が上手だと思います。

p426:たぶん大学病院は縮んでいる。いや、縮んでいるのは大学病院だけではない。きっと日本の医療全体が急激に縮小しているのだ。

p433:「メディアはいつもそうだ。白か黒の二者択一。そんなあなたたちが世の中をクレイマーだらけにしているのに、まだ気がつかないのか。・・みんな医療によりかかるが、医療のために何かをしようなどと考える市民はいない」

産婦人科医と小児科医のなり手がいない問題、本著を読みながら、改めて何らかの解決を模索していく必要性を感じた。

{8/17記入}