男女共同参画フォーラムの新刊到着コーナーにあった文庫本で借りてみた。初めての著者との出会いはなかなか刺激的ではあった。本著は、2012年に刊行された『誰もいない』を改題して文庫化した作品とのことで、作家の村上由佳氏が解説しているが、「<男の狡さを知りながら愛し抜く女の哀しさ>を書ける作家はめったにいない」p439として、著者はその最も優れた一人と紹介している。
発刊した幻冬舎のサイト↓
本書では、杏子(あんず)と体育教師の幹広(ミッキー)、図書館で働くみずきと明典、の二つの不倫関係を交互に、女性たちを語り手に進んでいく。関係がないようにみえて、重なる部分が垣間見えるのが、なんとも不思議な感覚になる。
「柔らかな綿でできた金槌で、頭をガツンと一発、殴られたような状態になっていた」p65とp95
「盗賊かもめ」p403とp427
いろいろ考えさせられた作品だった。
追記:記録しておきたい一文をメモ、杏子の言葉から p409から
生きていくことは、死ぬことに比べたら、ぶざまで、不格好で、美しくもなくて、苦しいことだけが多いのかもしれへん。せやけど、それでも、生きてさえいれば、別れた人ともまたいつか、どこかで、再会できるかもしれないでしょ。
(中略)
+p410:あなたに会えて、よかった。話を聞いてもらえて、幸せやった。また会おうね。年寄りになってからでもかまへんし、あの世でもいいし、ページの折れた本のなかでもいい。あなたにまた会えたら、嬉しいよ。
さようなら。
{2021/1/05-10読了、記入は同日(日)}