読書録

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難民と生きる

難民と生きる

難民と生きる

 プロローグの中で、海外から日本に戻ってくると、駅での風景に触れ、見知らぬ人に手を差し伸べたり、逆に見知らぬ人に助けてもらったりという風景が希薄であることをここ15年ぐらい痛感していることを紹介し、「混雑した場でベビーカーを押す女性を「迷惑」と捉える社会と、見も知らぬ難民を自宅に迎え入れることも厭わない社会…共感や連帯のあり方の違いは何に起因するのだろうか」p10という疑問から出発したという。


 著者がドイツで取材した人々の取り組みや思いが、本著で詳しく紹介されているが、テロ事件も相次ぐ中で、こうしたドイツでの動きは、とても素晴らしいと感じた。イラク政府は7月に、ISの拠点・モスルを解放したと表明したというが、シリアでは「国民の四人に一人が難民、二人に一人が国内でげまどっている5年間」(p17)という状況で、2015年、EU諸国とノルウェーとスイス欧州30カ国で130万人の難民を受け入れた中で、ドイツが89万というアンバランス、日本では2011年以降、難民認定を申請したシリア人63人のうち、認められのは3人、2015年度の難民申請者は7586人で認定者は27人(p23)というデータも紹介している。


発刊した新日本出版社のサイト⇒ https://www.shinnihon-net.co.jp/general/detail/name/%E9%9B%A3%E6%B0%91%E3%81%A8%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B/code/978-4-406-06128-5/

著者のブログで発刊案内→ http://mnagasaka.exblog.jp/23980243/


 メモとして、ドイツで難民と関わるようになったきっかけには、フェイスブックなどがあり、「ソーシャルネットワークの口コミの広がりをどう活用するかが鍵になってきている」(p189)こともあるという。


 また、普通の市民たちが、十人十色で最初の一歩を踏み出す様が感動的であるが、当事者たちは、「思いのほか、自分自身を豊かにしてくれる経験」「多くを学んだ」という言葉にリアリティがあったという(p203)。その背景には、ヨーロッパ各国で垣間見てきた「市民教育」「自分で考える力を育てる教育」のウェイトがあるからではないかとも分析し、いまの日本は「働き方と学び方に余裕がなさそうだ」(p216)という感覚は、その通りだろう。


 「難民を支援することと、日々の享楽という自由社会への宝への愛着を持ち続け、それを死守しようとし続けること。それは共に、自由で寛容な世界への希求の表れであり、地続きの一貫した態度であるように思う」(p219)という著者の言葉に耳を傾けたい。


{2017/7/8-11読了、記入は16}