読書録

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現代語訳 神皇正統記 (新人物文庫 い-17-1)

 「生前退位」をめぐる議論が続いているが、ある方に薦められて手に取る。12日の新聞の書評で、中公新書の『応仁の乱』が売れているという記事もあったが、日本史のこの室町〜戦国にいたる時代というのが、これまでの学校教育ではよく学んでこなかった面もあり、興味深い。

 本著については、扉で中世期を代表する思想の書として、後世の学者や史家に多大な影響を与えたということだが、こうして現代語訳で、また、他の研究で明らかになっている史実の注釈などがふんだんに盛り込まれ、読みやすくなっている。

 本著では、「神代から正理によって皇統が継承されている理由を述べることを志しているので…この書を神皇の正統記と名づけるのであるp80」とのことで、いわゆる「神話」と言われる時代についても記述がある。20年ほど前になるのか、大和政権の誕生をめぐる考古学での様々な知見に触れたり、黒岩重吾氏のいわゆる古代史小説もけっこう読んできたので、邪馬台国がどこにあったのか、神武東征などと史跡の関係など、そちらの方への関心が蘇ってきた。
 女系の議論についてもさまざまだが、本著を読んでも、いかに権力闘争が続いてきたのか、よくわかる。皇胤が絶えたため群臣が諸国をめぐって探し、越前から継体天皇応神天皇の五世の御孫)を迎えた(p216)というところが、戦後の学説を含めて、いまでも論争が続いているところ。本著のp341に「人民の望みにもかなっていたのだから、正統かどうかという疑いを抱くべきではない」と、「光孝天皇」の条に継体正統論を掲げている。
 テレビのコメンテーターとして登場する竹田恒泰氏が、何度か引用している"仁徳天皇の作と言われる歌"についても、本著の解説では、伝承をもとに後世作られた歌を仮託されたものとしている。
「高屋に のぼりてみれば煙立 民のかまどは にぎわいにけり」


発刊したKADOKAWAのサイト→ http://www.kadokawa.co.jp/product/301403001326/


 本著のp535で、「昔は、人々が正しい心をもっていたので…戒めたのだろう。しかし今は、人々の心がこのように驕ったものになったので、世は衰えるばかりであろう」というのは、いったい何が正しい心なのか、歴史はどう進んでくのか、など、ひるがえって考えさせられた。


{2017/1/29-2/10読了、記入は12日曜}