読書録

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女性活躍の推進

女性活躍の推進―資生堂が実践するダイバーシティ経営と働き方改革

女性活躍の推進―資生堂が実践するダイバーシティ経営と働き方改革

 立教大学の博士論文をベースに読みやすくしたという本著は、資生堂ダイバーシティ経営の取り組みや働き方改革の歩みを詳しく解説しながら、成果や課題について、実践的にわかる内容になっている。
 先に読んだ、資生堂インパクhttp://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20160822/1471911019 に重なる部分も多々あるが、著者が強調するのは、女性管理職の登用をすすめるには、ジェンダーダイバーシティ施策とワーク・ライフ・バランス施策を組み合わせて進めることp43だとする。そして今の共通課題目標は、★「男女ともにキャリアアップをしながら育児・介護との両立p179」★をはかることだが、いまだに実現した企業はないものと思われるとも指摘する。

 このうち、ジェンダーダイバーシティ・マネジメントについては、「従業員の多様性、なかでも、これまで活かされてこなかった女性の人材を登用して意思決定のパワーバランスを変え、組織を変革し、生産性を向上させ、価値創造性を高めていこうとする経営手法p35」と紹介する。資生堂で女性管理職が増えたことにより、広報部門で記事掲載が多くなったり、宣伝部門でデザインが多様化して新たな女性顧客を取り込めたなど向上があったというp96

 WLBでは、入社二年目の小室淑恵氏の発案で1999年に誕生したwiwiwというシステムによって、インターネットを介して職場復帰する育児休業者が、掲示板で仲間や上司と情報交換できるという狙いで、大半の役員は当時理解できなかったものの、会長の判断で商品化が決定され、いまやセミナーなど含む事業として成り立っているというp102。ソニーウォークマンをはじめ、先進的な取り組みはまずは多数の理解は得られないという事例の一つともいえるかも知れない。


経団連出版のサイト⇒ https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=436&fl=2


 具体的な取り組みなど備忘録として以下引用
資生堂2005〜2006のアクションプラン20で、残された課題は、女性リーダー育成・登用。男性の育児参加促進、社員の恒常的な長時間労働削減といった計画達成のハードルの高い項目p142

◇現在、女性管理職登用を妨げている4つの要因p171-172
1)転勤・異動問題:家族の固定的性別役割分担意識が消えず子育てなど家庭問題がネック
2)ジェンダー間職務分離問題:性別役割分担が残る
3)育休3年・小学校3年までの短時間勤務とキャリアへの影響:10年のキャリアロス
4)男性管理職・役員の「男性優位」の意識:企業風土の改革には至っていない 

資生堂ショックに対する日本女子大学大沢真知子教授のコメントp191「女性が仕事を家庭を両立させて活躍する社会の実現のためには、家庭での男性の家事や育児分担や、長時間労働の是正、さらには、働くお母さんを支える社会のインフラ作りが欠かせないことを示している」

◇2020年に向けた組織活性化と女性活躍推進策(Vision2020 2014年12月17日)p195-196
・非効率な組織の改革=若手が育たない、成果が無くても誰も責任をとらないヤジおるし「組織を活性化・若返りさせる人事戦略」として1)多様性、2)役割と責任、3)競争原理
・魚谷社長は「男女ともにキャリアアップしながら仕事との両立ができるようになること」「女性リーダーを増やす」「在宅勤務、リモートオフィス、インターバルなど多様で柔軟な働き方を導入」するなど、現場を変えることにコミットメント
◇欧州諸国の女性活躍での共通の取り組み
1)意思決定に関与できる女性管理職・役員の比率が一定以上になる施策の導入
2)長時間労働の是正
3)男性の家事・育児参画による家庭内のジェンダー平等とWLBの実現を可能にする法制化


 本著の中で紹介されている「イクメンランチ」でのエピソード(p181〜2)が、なかなか変わらない意識を表している。男性社員からかなり家事や育児を手伝っているが、まだ足りないかという質問が出て、女性管理職が「手伝っているという意識それ自体が誤っている。本来共同し分担しあうもの」というのは、その通りだろう。振り返って、どこが半分なのかをめぐっては、折り合いがつかない議論が続けてきた思いもあるが、こうした意識自体が変わらないとダメなのだろう。


{16/09/10-12読了、記入は14}