読書録

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「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

 育休や短時間など支援制度が整ったのに、なぜ総合職の女性が辞めていくのか?という問題意識は、これまでこの読書録でも取り上げてきたところだが、15人のインタビュー取材を通じて詳細に背景を探って共通項を見出そうとした本著は、いまの職場事情を浮かび上がらせた面がある。

 著者自身が東大卒で新聞社に入社し、立命館大学大学院で学び直して、このテーマ「男性と同等に仕事をバリバリとやる気に燃えていた女性が、ずっと働き続けるつもりで就職したのに、結婚や出産をして結局会社を辞めていくのはなぜなのかp39」を調べようと思ったというだけに、内容に重みがあると感じた。


出版した光文社のサイトに目次あり⇒ http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038168


いくつか印象に残ったポイントを以下引用
◇ワーキングマザーWM活用職場では継続するが、前例が少ないと退職しやすいp85〜、全国展開しているマスコミなど花形や本流が比較的明確な企業だと競争に巻き込まれ、ラインから外れるとマミートラックとして認識され、長期的な昇進・昇格に大きく差がつくことが予想されるばかりか、「やりがい」が問題になる〜p89+ローカル採用でない限り、全国を転々とすることが多く、夫婦ともにこのような業種である場合、同居の見通しを立てることが難しいp123

◇WMが働きやすいのは、仕事の量は調整しながらも、内容や質は変わっていないことp94+積極的に情報を取得して企業を選んでいるp114

◇p96:いくら企業が両立支援制度を作り多様な働き方を認めても、評価制度が「企業にフルコミットできる人」しか想定していないものであれば、多様な人材が活躍できる素地が整っているとは言えない。

◇川口章(2008)は、夫の賃金や将来の昇進可能性を妻に比べて高くし、夫は仕事、妻は家事に責任を持つという性別分業を合理的にするとしている。ジェンダー秩序が生み出すにもかかわらず、家庭内の役割分担を強化させ、夫婦間格差をますます広げることになるp148

◇「男なみ発想」の学生が「女ゆえ」に退職するパラドクスp278、ある程度女性を意識し意欲を調整できた女性の方が仕事を続ける見通しがたつ+意欲の冷却を経験しなかった女性は、男性中心主義的な競争への意欲を掻き立てられることで、継続するための環境や資源を積極的に選択できず、退職を迫られるから〜女性の働きやすさを嫌悪したり無視したりする女性たちは、女性らしさを切り捨てることで、男性が圧倒的に多い世界での競争や女らしい女性が損をする社会を生き延びてきた⇒女性性の否定により名誉男性(例外女性)をめざす「逆転したジェンダーの社会化」が生じている

◇企業に残る「非男なみ」女性と構造強化の構造p293〜、ジェンダー意識に従うと、競争意識がない方が企業に残りやすい+残るのは出産していないか育児を全面的に外注するなどケア責任を負っていない男なみ女性の二分化、様々な弊害をもたらす

◇夫婦関係を侵食する夫の「男なみ」:両立支援が整うほど、夫の調整の必要はなくなり、家庭内で妻が二重負担を背負いやすくなる可能性があるp302

◇対策として、既存のジェンダー秩序を問い直す(教育、ケア責任を評価引き上げ)、既存のジェンダー秩序の中で女性を押し上げる(男なみ以外のキャリア展望、復帰後の女性を正当に評価、働いてもらうための仕組み・在宅勤務などを整える、p307〜324

{12/29-01/04読了、記入は10}