読書録

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自己愛モンスター「認められたい」という病

(085)自己愛モンスター (ポプラ新書)

(085)自己愛モンスター (ポプラ新書)

 著者は扶桑社から『許せないという病』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20160601/1465022374 )を去年12月に上梓しているので、3か月あまりでこちらを書いたことになるが、ルサンチマンキューブラー・ロスのモデルをこちらでも紹介している。前著が個人的に育った背景に踏み込んでいるが、本著ではむしろ、注目を集めた社会的事件を扱い、一つの歴史記録にはなっていると思う。

 また、SNSの普及が、簡単にウソをつくことができ、欲望の肥大化に拍車をかけていると指摘するp30。「他人の幸福が我慢できない怒り」である羨望が募り、欲望が刺激され、モンスターが出現しやすくなっているという分析だp33。

 事件については、1)相手を攻撃したがるのか?依存したがるのか?、2)特定の誰かをターゲットにするのか、不特定多数がターゲットなのか、という2つの軸に基づいて分類しているp38。「イネイブラー」という言葉(p41)は触れたことがなかったが、アルコール依存患者の夫にお酒を飲めるように整える妻など、自己確認の最後の砦になっていて、やめられなくなるケースもあり、オウムの共依存関係にもこの概念を適用しているp127。


出版したポプラ社のサイトに目次あり⇒ https://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=82010850


 いくつか引用してメモ。
アメリカの犯罪学者レヴィンとフォックスによる「大量殺人の心理・社会的分析」で6つの要因p97
A)素因 1)長期間にわたる欲求不満、2)他者的傾向(責任を他人に押し付けるp160)
B)促進要因 3)破滅的な喪失、4)外部のきっかけ (←自己愛モンスターにもあてはまるp同上)
C)容易にする要因 5)社会的・心理的な孤立、6)大量破壊のための武器の入手

◇理想と現実の間のギャップに不満を感じる場合に、ギャップを小さくする方法p166
1)自らの実力を高める、2)現実の自分を認めて受け入れる=あきらめる

◇復讐願望にとりつかれないために・・・(セネカ「怒りとは、不正に対して復讐することへの欲望である、チャーチル「憎しみと復讐は、最も高価であり、そのうえで無益で、自己破壊に導く贅沢だ」、スペインのことわざ「幸福こそ最大の復讐」など引用したうえで⇒
p177:復讐したい相手がうらやむほど幸せになることをめざそう。それが復讐願望を乗り越える最善の方法なのである。


 表と裏のような前著と本著ではあるが、本著のあとがきにあるように、暴走しないよう、自己観察と自己分析を忘れずにやるということが、救いの道なのかも知れない。

{2016/06/19-22読了、記入は25}