- 作者: 山口瞳,開高健
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/08/28
- メディア: 文庫
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サントリー宣伝部で活躍した芥川賞作家と直木賞作家が書いた、鳥井信治郎と佐治敬三を軸にさまざまな人が登場する小説のような、とてもユニークな社史が本著。ウイスキーが日本で誕生したころの話をうかがい知ることが出来る。そして、サントリーの自由闊達さや面白さが良くわかる。
出版した新潮社ホームページ…http://www.shinchosha.co.jp/
この本については→http://www.shinchosha.co.jp/book/111134/
紹介されているウイスキー関連のエピソードをいくつか引用
◇輸入洋酒の樽に使い物にならないアルコールを入れていたがいい味に変わっていたことから、のちに本格的なウイスキーに命がけで取り組むようになったそもそもの発想につながっていく・・「酒は生きている。酒には神秘がある。この考えがサントリー製造の発端となる」 p119-120
◇(信治郎がなぜ踏み切ったか)ウイスキーこそは洋酒の王者である。洋酒業界に志をたてた以上、ウイスキーをやってみるべきである。…信治郎の鼻が、ブレンダーとしての夢が、本格ウイスキー製造に向かわせたといえないだろうかp145
◇p147:信治郎は理屈めいたことをいわなかった。「やってみなはれ。やらなわかりまへんで」これだけだった。
◇(三井物産に頼んで本場のイギリスからムーア博士を招く計画をたてていたが、そのとき、イギリスで学んだ青年技師がいることを教えられたのが竹鶴政孝)まだ二十代であった竹鶴を年棒四千円でむかえいれた。山崎の地を見つけたことが、ひとつのラッキーであった。p148
◇試作品は焦げ臭く、工場長の竹鶴をイギリスに派遣し、自分でも専門家に聞いて回ったところ、ビートの焚きすぎにあったらしかった。昭和4年に白札を販売するが売れず、(カスケードビールを買っておらが大将で評判だった田中義一対象にあやかりオラガビールもこの年に販売p254)昭和6年には仕込みを中止し窮地に。オラガビール工場を昭和9年に売り、サントリーを守る。それが逆に12年物の角瓶が誕生し、信治郎は天の試練だと考え、売れていたら進歩がなかったというp150-153
昭和36年に出た名宣伝文句を以下(p312)
開高健:「『人間』らしく/やりたいナ/トリスを飲んで/『人間』らしく/やりたいナ/『人間』なんだからナ」
山口瞳:「トリスを/飲んで/HAWAIへ/行こう」
(23追記)本著については、『へんこつ なんこつ』佐治敬三著で、「弊社の七十年社史」として引用されている。
- 作者: 佐治敬三
- 出版社/メーカー: 日経
- 発売日: 1994/02
- メディア: 単行本
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⇒また、「父が山崎のウイスキー工場に夢をかけたのは、大正十二年のことである。それ以来、すべての利益と汗と涙をこの谷間の蒸留所に注ぎ込んできた…日本人のために、日本人がつくった、日本のウイスキー。日本のウイスキーとは飲んでおいしいウイスキーである(p76)」と記す。
⇒「やってみなはれ」という言葉について、本著では、以下のように記している:p100-101「昭和三十五年、自宅で静養している父の枕元で、私はビール事業進出の決意を打ち明けた。しばらく考え込んでいた父は、やがて低い声で「やってみなはれ」とつぶやいたことになっている。この父の言葉は、後年父の一生を『大阪の鼻』と題して芝居に仕立てていただいた北条誠氏の名筆によると、さらにドラマチックになる。「わてはこれまでウイスキーに命を賭けてきた。あんたはビールに賭けようというねんた。人生はとどのとまり賭けや。わしは何も言わん。やってみなはれ」
⇒タイトルの「へんこつ」は、私をさしたおやじのなげきのことばで、「かたくな、片意地」などいささか悲観だとして、ごろ合わせで「なんこつ」を加え、やわらいところもおます、というわけだそうだp227
(追記2)「やってみなはれ」は『ほな ぼちぼちいこか 大阪弁』前垣和義著 の中で、「部下のやる気に火を付ける」(p222〜224)として逸話を含め紹介されている。
- 作者: 前垣和義
- 出版社/メーカー: すばる舎
- 発売日: 2005/08
- メディア: 単行本
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⇒言葉の中に、「上の者が責任をとるさかいに、ひとつ、思うぞんぶんに、腕をふるってみーひんか」といった心配りが溶け込み、上に立つ者の度量の広さであり、部下への愛情と信頼があるという。
⇒かつては「経済の太陽は西から昇る」といわれたとし、スーパーや魔法瓶、引越サービス、フリマなどをあげている。
⇒また、松下幸之助さんは、「どないしたらええか、考えてみんか」と命令ではない言葉を使ったと紹介している。
{7/26読了、記入は8/3+23追記}