読書録

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ウェブ社会のゆくえ (NHKブックス)

ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで (NHKブックス)

ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで (NHKブックス)

副題にある「<多孔化>した現実のなかで」がテーマで、その意味について、著者は「はじめに(p13)」で、「現実空間の中にウェブが入り込み、ウェブが現実で起きていることの情報で埋め尽くされるようになると、かつて現実の空間と思われていた場所に、複数の情報が出入りし、複雑なリアリティを形成していることに気づく。本書ではこうした、現実空間に情報の出入りするアナがいくつも開いている状態のことを、「現実の多孔化」と呼んでいる。現実が多孔化し、またそれを通して様々な人の思惑がばらばらに入り込んでくるようになるとき、私たちは「この現実」における他者との共生関係をどのように維持すべきか。それが本書の課題だ」と説明する。ただ、言葉や概念自体が、わかるようでつかみにくいところがあり、どこまで理解できたか不安が残る。


本書を出したNHK出版のサイトに概要があり⇒https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00912072013


それにしても、ウェブに結構慣れ親しんでいるようで、知らないことが多々あった。
ドラクエルイーダの酒場」は、空間に情報だけでなくコミュニケーションができ、空間の意味を上書きする。p36に独立の度合いをy軸、意味を生み出す要素をx軸とた図あり。

◇ソーシャルのつながりが深まる中で、対面する相手とそうでない相手との間に生じる葛藤にどう向き合うのか、デート中の携帯電話などをどう考えるか?⇒優先順位を判断しながらふるまいを決定しているが、争点は複雑化している。

◇私的な領域が公共空間でも確保されるようになり、代償として個人情報が管理され再利用される「プライバシーのコスト」が生じる。

◇(アニメ聖地巡礼と観光地の創造などあり)p194ある空間を上書きする情報が人々のアイデンティティの核となり、それが現実の地域を変えることで、地域を支える空間の意味が強化されるというポジティブなループこそが、本書の課題の解決の道となるのである。

◇現代のコミュニティでは人々の帰属意識を持つことが大事⇒ハコモノでもゆるキャラでも、人々の帰属感の対象にならなければダメ:(企業ブランドの場合)「消費者にアピールするイメージ、シンボルの定義」(コンテクスト)⇒インフルエンサーの活用、話題のネタの提供(コミュニケーション)⇒ソーシャルメディアでのコミュニケーションの可視化(アーキテクチャー)の3つのデザインが共同性を生み出す(p210)

◇多孔化による意味の空間の分断は、社会の意味を共有し継承することすら困難にしてしまうことへの対処の前提で、社会全体で共有し継承されるべき空間の意味は存在するか?「共同体に向けられた死」を伴う悲劇として、戦争や大事故、災害の記憶に注意を向けるべきp235

◇本書の結論として3つの道p236
1.社会における記憶の継承を断念し社会政策上の意味を持たないようにする
2.死者に向けられた語りの場所、公的な式典を可能な限り温存しようとする近代主義的立場
3.多孔化していく現実の空間全体を上書きするような情報で、実際には風化していく空間を、あらためて儀礼化するという道。「聖地巡礼」で行われていることを、より意識的に「聖地」にしようという試み:仮想現実が実際の空間を上書きする形で、儀礼性を伴うふるまいを促していく。


印象に残りポイントと感じたことを◇で7項目上記記してみたが、先の経営学や心理学などに比べ、社会学というのは、なかなか難しいと感じるのはなぜだろう。まだまだ学ぶことは多い。


ここまで書いたあと、書評関連で本著をうまくまとめているサイトを見つけたので、備忘録的に、リンク先を⇒ http://honz.jp/32649
HONZ というサイトがあることを知りました。

{11/9-11読了、記入は16}