読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

首都圏銀行

首都圏銀行 (徳間文庫)

首都圏銀行 (徳間文庫)

佐高信氏が『メディアの破壊者・読売新聞』の中で触れていた一冊で、千葉県の地方銀行・房総銀行を舞台に描いた経済小説。フィクションでありながら、背景に出てくる戦後の開発政策と銀行の役割、地元財界との関係、中央銀行の人事施策と派閥抗争など、どこまでモデルとなったケースがあったのか、興味深い。ネットで検索した限り、JALと山崎豊子さんとの対立関係のような話にはなっていないが、銀行としては、結構、イメージが悪くなる可能性も否定できない。小説としても、攻守逆転などあいついで展開が早く、とても面白かった。


ラストの解説には、千葉県版ロッキード事件と呼ばれた小見川開発汚職事件などについて、いわゆる「千葉方式」に則った東京湾岸開発のありさまを報告した朝日新聞千葉支局『追跡・湾岸開発』(朝日新聞社)に詳述されている(P377)とあり、これはぜひ一度読んでみたい。おりしも圏央道の千葉県内の区間が、おととい4月27日(土曜)開通し、アクアラインとの接続による観光振興が期待されているが、過去の歴史についても、きちっと把握しておく必要があるようにも思う。


本著のあらすじとしては、京葉工業地帯の発展を背景に、地銀ビック6に育て上げた現頭取・丹治得蔵が、中央銀行副総裁の鳥海良夫から、かつての部下で副頭取の滝上季彦へ禅譲を求められるが、秘書役で懐刀の知野喬が、政治家や業界紙など使った策略を講じて派閥戦争が展開される。人事のかけひきなど、凄まじい人間ドラマが描かれ、どうも小説を読むと主人公に肩入れしたくなるという、なびきやすい面が自分にはあるが、社会的に許されることかどうなのかは、微妙なところ。

地元の有力者として登場する、中央とのパイプ役/野川醤油の田頭直紀、県内まとめ役/千葉自動車の熊谷銑三、元陸軍憲兵中佐で黒幕の樺島保、は、それぞれモデルとなる人物がいるのだろうか?なかなか奥が深い。


{4/20-29読了、記入も同日}