- 作者: 池井戸 潤
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/12/03
- メディア: 文庫
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テレビドラマもこの東京編からは見ていたので、頭の中では、登場人物たちがドラマの人間とかぶって読む感じになり、これが何とも不思議な感覚ではある。金融庁の黒崎検査官の「オネエ言葉」や、融資部の福山との対決など、シーンが蘇ってくる。「タブレット上の空論」というのが印象に残っているが、原作ではタブレットがそれほど普及してなかった時代なのだと改めて認識する。
一方、頭取との対決でドラマでは最後は土下座させるのだが、原作ではそこまではなく、演出したということか。また、近藤が頭取側の提案を受け入れる際のシーンはドラマでは表情だけだが、本書では「疲弊した感情の海がまりが、近藤の眼前に広がっているような気がするのだ。それは寂寞たる海だった」というのは、とてもうまい表現だと感じた。
ちょうど今シーズン放映中の『陸王』の視聴率も良いようだが、こちらはまだ一話しか見ることができていない。さてドラマが先になるか、小説が先になるか・・・書店では、ドラマを宣伝する全面カバーになっていて、日曜劇場はこのパターンが勝利の法則ともいえるかもしれない。
発刊した文藝春秋のサイト→ http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167728045
残しておきたい言葉を以下に引用
p217:(近藤の思い)仕事は二の次で余暇を楽しめばいい、そう考えたこともある。しかし、一日の半分以上も時間を費やしているものに見切りをつけることは、人生の半分を諦めるに等しい。誰だって、できればそんなことはしたくないはずだ。いい加減に流すだけの仕事ほどつまらないものはない。そのつまらない仕事に人生を費やすだけの意味があるのか?
p361:(半沢の思い)人生は一度しかない。たとえどんな理由で組織に振り回されようと、人生は一度しかない。ふて腐れているだけ、時間の無駄だ。前を見よう。歩き出せ。どこかに解決策はあるはずだ。それを信じて進め、それが、人生だ。
11月19日は、北海道拓殖銀行が破たんしてからちょうど20年。リゾート開発など多額の融資をして不良債権が発生、連鎖倒産を生むとともに、行員をはじめ多くの人が職を失った。山一證券の破たんもちょうど20年前。株価や地価など復調してきているとはいえ、三大メガバンクはリストラ計画を発表し、金融業界をめぐる情勢は不透明だ。
そうした中で、どう仕事に取り組むのか、半沢直樹シリーズは、確かに元気を与えてくれ、前向きに取り組みたいという気持ちを後押ししてくれる。
{2017/11/18-19読了、記入は23木祝}