読書録

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半島へ、ふたたび

半島へ、ふたたび (新潮文庫)

半島へ、ふたたび (新潮文庫)

淡々とした筆致ながら、拉致被害の重さ、自由の喜び、市役所勤務から翻訳へ自分で道を選択していった過程などが、歩んできた事実をベースに率直に語られ、読んでいて胸に迫るものがある。


再び半島を訪れた時の心境を、文庫本のあとがきの中で、「自由の身のうれしさとともに、改めて身震いするほど重苦しかった北での生活、他の拉致被害者の帰国がいまだ実現していないことへのもどかしさ、波乱万丈な運命のもとで日本で健気に新たな道を歩んでいるわが子への思いなどなどが、瞬時にかけめぐった」(p334)とつづっていた。


また、当初のあとがきで、本著について、「(帰国実現で)僕たちはいつでも会いたいときに肉親や友人に会える喜び、いつでも行きたいところに行ける幸せ、いつでもやりたいことをやれる楽しみを思いっきり享受しながら暮らしている…人間にとって自由がどんなに大切で、ありがたいものかを日々噛みしめながらの生活を、拙いながらも、表現してみたつもりだ」(p330)と記されている。


著者が翻訳された『孤将』や『私たちの幸せな時間』は、ぜひ読んでみたいと思った。


中学校の講演で、著者の正直な言葉として語られた内容も印象に残る。p327
「100%の自信が生まれるまで待っていたら、チャレンジなんてできない。というより、100%の確率で成功するなら、それはすでにチャレンジではない。最初は50%の自信でいい。まずは始めてみよう、後はやりながら学んでいけばいい。必要にかられた学習、実践の中での学習こそ、何倍も身につく。失敗したら、失敗を通してしか学べないものを学びとればいい」


率直で誠実だなあと感じたのは、p289のこの言葉。
「一番力を入れていることを人に評価されたときの気分は、なんとも言えないものだ」


なかなか生きづらい世の中になり、悩むことも多いけれど、著者のように、極限の立場に追いやられた経験から語られる言葉はとても重く、普段は当たり前と思っている、自分で自由に決められること、生きていられることの幸せを、改めて心にとめておきたい。


{1/11-14読了、1/17記入}