読書録

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犯人に告ぐ

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

劇場型犯罪に劇場型捜査で対抗する責任者に、6年前の児童誘拐事件で失態を演じた巻島史彦警視が任じられる。事件を解決していくストーリーに絡む人間関係がとても面白く、引き込まれた。
巻島警視が、誘拐事件で組織としてミスを認めることができずテレビで強弁してしまう一方、ラストの方で決着をつけるところは、本筋とは別に、正直ほっとした。


保身に走る本部長やリークする課長など、自己の利益ばかり考える嫌な脇役がいる一方で、当時の部下で再び信頼を置く本田明広刑事特別捜査隊長など、好感の持てる方々も登場する。とりわけ、左遷時に警視が頼りにした津田良仁巡査部長が、とてもいい場面と言葉でアドバイスをして、そこが印象に残った。

上p255:「…みん人の子なんだってね」…「だからね、巻島さん、犯人を怖がっちゃいけませんよ。ただの人の子なんです。…みんなおっかあの腹から生まれた人の子ですよ」
上p258:(巻島)「弱音を吐きたいときにそれを聞いてくれる人間も必要なんだ」

上p281:「泣きたいときは、泣きゃあいいんです」(←遺族への説明場面)

下p122:「…案外、自分の人生のことを他人のせいにできないことくらい、みんなわかっているんじゃないですかな。いろんな意見がある社会で生きているわけでね、みんな自分で落としどころを見つけてやっているわけですよ」
(巻島)「達観か…無責任か…」
「両方ですよ。なるようにしかならないってことです」

下p213:「あなたは根が正直者なんですよ。嘘をついたり人を出し抜いたりすることが特異な性分じゃない。だから6年前もマスコミの前で失敗してしまった」…「でもこの世界、嘘をついたり人を出し抜いたりしなきゃいけないことも多い。あなたは無理してそれをやってる」
(巻島)「嘘が苦手なだけじゃないさ…」「本心をさらけ出すのも苦手だ」
「それはちょっとした勇気の問題でしょうな」
自分の弱さを受け止めてくれる人間がそこにいるというだけで、何となく気持ちが安定する思いだった。


下p257:「人を叩き過ぎちゃあ、いかんのです…」「叩けば誰でも痛いんですよ…」「痛そうじゃないから痛くないんだろうと思ったら大間違いだ…それは単にその人が我慢しているだけですからな」


味わいのある言葉でした。

{7/3-8読了、記入は同日}