読書録

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官僚の責任

官僚の責任 (PHP新書)

官僚の責任 (PHP新書)

なぜ著者のように既存の組織をよりよい方向に変えようとしている人を、政治はうまく活用できないのか。一方的な言い分も一部はあるのかも知れないが、大方においては、官僚が前例にとらわれたり、既存の組織の拡大を図って動こうとするのは、マックス・ウェーバーが官僚制について分析したことから何ら変わることはないと思う。だからこそ、政治主導なり別の権力がきちっと見ていかなければならないはずで、著者はまさにその役割を、ある意味、国民の視点から実現しようとしたように思う。また、政権交代を実現した現与党も同じ方向をめざしていたはずなのに、なぜこうなってしまうのか。
人のため世のためになる仕事をしたいと公務員をめざす方は著者を含めて多いはずなのに、人の上にたちたいという出世欲・権力欲を満足させるためになる人が多くなったという著者の感想には悲しくなる。国民のために働く構造に変えていく必要は間違いなくある。
こうした悪習がやまないのは、年功序列身分保障とともに、いったん入ったら所属が変わらない縦割りの組織構成に理由があると著者は看過するが、これはどんな組織でも当てはまるのかも知れない。

著者のTPPに対するスタンスも明快だ。守るべきものでないものまで守る必要はないとして、リスクを恐れず国際化を図るべきだと提言する。農業、医療、介護、観光に力を入れるため、単に保護ばかりしていてはいけないというわけだ。原発をやめて再生可能エネルギーに国をあげて取り組めばと、これも明快な主張を展開しているが、こうした大胆さが、閉塞感を打ち破るためには、今必要なのだろう。ただ、ここまで発言すると、確かにバランスで政治を動かそうとするとなかなか風当たりは強くなるだろうとは思う。このまま増税に突き進んでも、何ら変わらず没落へのシナリオになりかねないという著者の指摘は、真摯に受け止める必要がある。


p55:はっきり言う。日本の官僚は優秀でも公正でも中立でもない。…今回の東日本大震災福島第1原発の事故で…判断も決断もできず、責任をとろうとしない…全体を見ずに、省のことだけを考えて無益な行為をくりかえす(p72)

p94:(真の政治主導を)端的にいえば、政治家は方針を示し、決断し、責任をとる。一方、官僚は手足となってそれを支え、実行する
…民主とは官僚を排除することが政治主導とはきちがえた…

p134:権限と予算と天下りポスト

p139:50歳をすぎて著者ポストで1500万円、ノンキャリアでも1000万円は保障されている








{2/28読了、3/4記入}