読書録

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 生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生命とは何か、これまでの分子生物学の研究成果を、まるで小説のような筆致で解説してくれている。DNAの二重らせん構造と動的平衡という考え方に至るまでの、さまざまな研究者の人間模様など、これまで知らない分野だっただけに、興味深く読ませていただいた。

それにしても、こうした研究分野というのは、どう成果を出していくのか、とても難しいと感じる。著者が試みたタンパク質の研究も、この本を読む限り成功しなかったようで、成果がでないと予算も降りてこないという昨今の大学をめぐる状況からすると、大変だと思う。

また、遺伝子操作については、これまでにもさまざまなSFや映画が描いてきているけど、ちょっと恐ろしい部分も感じた。

この本は確か、賞を獲得してベストセラーになり、なかなか読めないでいたが、ようやく読むことができて嬉しい。


(目次-引用)
第一章 ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク;ロックフェラー大学(旧 医学研究所)での野口英世の研究は、実は菌が見えていなかった。

第二章 アンサング・ヒーロー;←ワトソンとクリックがDNAの二重らせんを発表したが、縁の下の力持ちはオズワルド・エイブリー。
p38:ウィルスを生物とは定義しない→生命とは自己複製をするシステムである、との定義は不十分。

第三章 フォー ・レター・ワード;DNAはA,C,G,Tの四種類で構成。

第四章 シャルガフのパズル;←AとT、CとGの含有量は等しい→互いに他を写した対構造=自己複製を行うシステムが二重らせん構造に担保。

第五章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ;PCRを閃いたキャリー・マリス。
p84:博士号とかけて足の裏についた米粒と解く、そのこころはとらないとけったくそ悪いが、とっても食えない。

第六章 ダークサイド・オブ・DNA;ワトソン『二重らせん』、クリック『熱き探求の日々』、ウィルキンズ『二重らせん 第三の男』。

第七章 チャンスは、準備された心に降り立つ;1962年の授賞式に、寄与したロザリンド・フランクリンの姿はなかった。

第八章 原子が秩序を生み出すとき;シュレーディンガーの問「原子はなぜそんなに小さいのか」。

第九章 動的平衡とは何か;シェーンハイマーの発見した生命の動的な状態:エントロピー増大の法則に抗うのは仕組み自体を流れの中に置く。
p167:生命とは動的平衡にある流れである。

第十章 タンパク質のかすかな口づけ;

第十一章 内部の内部は外部である;
p191:細胞生物学はトポロジーの科学→ものごとを立体的に考えるセンス。

第十二章 細胞膜のダイナミズム;

第十三章 膜にかたちを与えるもの;

第十四章 数・タイミング・ノックアウト;
p243:遺伝子を人為的に破壊して、その波及方法を調べることを「ノックアウト実験」という。

第十五章 時間という名の解けない折り紙
p271:生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。
p272:結局、私たちが明らかにできたことは、生命を機械的に、操作的に扱うことの不可能性だったのである。


{3/18-22読了、記入は30}