- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: 単行本
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オウム事件を新たな視点でとらえなおそうという月刊PLAYBOYでの連載をまとめた本。531ページあり、読みごたえがある。これまで著者のメディアリテラシーに関する本を読んだことはあったが、映画は見たことがなく、今回、この本に触れたことで、映画も見てみたいと思った。
著者は、オウムを「狂暴凶悪な殺人集団」とか「麻原に洗脳されて正常な感情や判断能力を失ったロボットのような不気味な集団」というレトリックをマスメディアが使い、公安・捜査当局もこうしたイメージを利用、娘の大学入学拒否など社会全体も拒絶するような状況について疑問を呈示する。オウム信者も普通の人間だし、麻原彰晃は訴訟能力を欠いた状態なのに裁判を強引に進めることを批判。「弟子の暴走」論に確信を持ち(p485)ながら、このまま死刑になれば真実はわからないままになると、警鐘を鳴らす。ただ、こうした立場が今の社会にあって少数派ということは、著者自身が強く認識している。その孤独な心境を、聖書の言葉を引用することで耐えようとしている。
p354:父よ、彼らをお赦しください。彼らは何をしているか自分でわからないのです。
許せない事件で、弟子の暴走論については、この連載を読む限り、著者に同意はできない(早川自身が違うと言っていたと本人も書いているのに・・)ところもあるが、なぜこうした集団が生まれ、事件が起きたのか。忘れずに検証していくことは必要だと思う。
{3/23-28読了、記入は31}