読書録

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「親日」台湾の幻想

「親日」台湾の幻想 (扶桑社新書)

「親日」台湾の幻想 (扶桑社新書)

保守でも左翼でもないという立ち位置から台湾を解説するが、キーワードは「萌日(もえにち)」として、平和や環境を重視した日本がアジア各国の若者を中心に好感を持たれていることを意識すべきだと主張している。
これは台湾の植民地時代を取り上げた番組をめぐり、保守系団体から攻撃を受ける中で、台湾に在住する共同通信出身の著者が、ある意味冷静に現状を分析しているとも言える。
右翼という言葉を使わず、「保守」としていることも、ネットでの議論を踏まえて、双方に気を使っていることが伺われる。また、引用されるアニメや声優、ライトノベルなどの話は、著者のこの方面の造詣の深さを示す一方で、自分が若者文化についていっていないなあ、というのを認識させられた。


p8:筆者が番組を見たところでは、日本だけをことさら悪く描いたというわけではなく、むしろそれを相対化するかのように、同時期の欧米帝国主義による植民地統治の過酷さにも言及していたし、「親日的」という言葉の裏で忘れられがちな負の側面や台湾人の心の傷跡を指摘していたという点で、それなりにバランスが取れた内容だと思った。・・(本著執筆の直接の動機はこの番組問題)


p16:この本では、日本的なイデオロギー論争を排して、「ありのままの親日・台湾」「平和でクールな日本が好きな台湾」の実情を描こうと思う。


P43:保守派のように、韓国の反日を拒否して台湾の親日だけを受け入れたり、左翼のように韓国の反日だけを正しいと見なして台湾の親日については否定するか邪推するのは、どちらも傲慢である。


p170:日本は平和国家として60年以上もの実績があり、それをアジアの多くの国々や人々は評価し、信頼を寄せている。(中国や南北朝鮮が例外で、他のアジア諸国は例外なく評価)


p195:「多角化路線」:筆者は親米保守派の「対米追従」、国粋派の「対米自立重武装」、リベラル派の「中国重視」のいずれも否定した。では代案は何か。簡単にいえば、国際社会に広がる日本に対する好感や信頼感を武器にした多角化路線である。


p200:海外に在住している筆者から見ると、いまの日本人はあまりにも内向きだ。「自虐史観」を非難する右派も、親日国家の存在を否定する左派も、いずれも世界の中の日本をとらえようという視野が欠けていて、日本という島国の殻に閉じこもっている。これは日本人が改めてゆくべき欠点だと思う。


p223:「平和と環境を軸に」日本が前面に出すべき価値は平和と環境である。平和が定着し、豊かになれば、徐々に民主主義は成長する。(マレーシアに対してアメリカのように民主主義を押し付けなかった)


p227:(旧台北一中関係者の医者は番組に問題があるとは思わなかったという)NHKに抗議している保守派は、「NHKが誘導尋問して、わざと反日的なことをいわせて、そこだけ編集して取り上げた」と主張している。しかしその医者の話を聞くにつけ、保守派自身も「誘導尋問」で台湾人にわざと日本賛美の主張ばかりさせて、NHKを抗議するように仕向けた部分がなかったとはいえないように思える。

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