読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

かあちゃん

かあちゃん

かあちゃん

重松清さんの小説には、これまで期待を外されたことはない。この本は、その後に出た「十字架」と似た部分、「いじめ」をめぐって、当事者や傍観者を含めてみな忘れることなく背負っていかなければいけない、だから「いじめ」は許されることがない、ことと母親の有り難さというのが主題なのだろうが、ディテールの一つ一つが、心に響いてくる。(ネタバレになるので以後は注意)



第一章 アゲイン:この章の語り手・梶谷ヒロシ氏の母親は、夫が起こした交通事故で助手席に乗っていた村上さんとともに亡くなってから、笑うことを自ら禁じて毎年墓参りに行き、罪を償おうとしていた。その墓で母親が倒れたのを村上さんの娘、河野友恵さんが気づいた。その息子で中学生の啓太君は、東京で命じられたとはいえ、いじめてしまった親友・黒川久志君が自殺未遂をしたことで責任を感じ、登校拒否になる。この時は里帰りをしていたが、一生謝り続けた生き方があったことを知り、東京に戻ることにする。
p32:住職「墓に参って、手を合わせて、ああおかげさまでまた1年たちました。半年たちました。春が来ました、夏が来ました、いうて・・おかげさまで元気で生かしてもろうております、いうて・・・忘れません、いうて・・・」


第二章 リセット:啓太君とともに親友の黒川君を、同級生の松谷君から言われていじめた本多敏之君の話。啓太が戻ってきて、松谷君のいじめに対抗するようになる。


第三章 リピート:おばあちゃんが認知症になり、母親の大変さを見ながら命について考える同級生の女の子・千葉文香さんの章。

第四章 ジャンプ:いじめが起きていながら気付かなかった担任の水原先生の話。正論に心が通わない。優秀だった教職者の母親から独り立ちできない状況から、ようやく一人暮らしをする決意をする。


第五章 トライ:子育てと仕事の両立に必死になっている女性教師の福田先生の話。仕事で子どもの面倒を見てもらう母親と喧嘩別れしてしまった後日、冷蔵庫のカレーにアスパラとグリーンピースで「ガンバレ」と母親が残してくれてあった部分(p253)は、思わず泣いた。自分の生活を振り返って、最も共感を覚えたというか、そんなことあったなあ、というエピソード多かった。


第六章 ドロップ:いじめた松谷浩司君の章。本当は弟思いの優しい兄なのに、母親が家を出ていったことで、辛い思いをしていた。


第七章 リメンバー:いじめられた黒川君の章。河野、本多、千葉、松谷が転校先に訪ねてきたことから会って話をする。千葉は「償うこと」を、また黒川は河野に「忘れない」ことを伝える。


第八章 アゲイン、アゲイン:梶谷氏の「おふくろ」が、状況して河野家で線香をあげる。梶谷氏と河野くんの対話。「忘れないでいるうちは、もう昔みたいなこと(いじめ)にはならないんじゃないか」。
p414:「ひとりぼっちじゃないって教えてくれるひとがいれば、だいじょうぶなんだよ」

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