読書録

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愛国消費

愛国消費 欲しいのは日本文化と日本への誇り

愛国消費 欲しいのは日本文化と日本への誇り

豊富な調査データを活用して、今の社会を読み解いていく。その手法は、『下流社会』でも見られたように、こうなっているのか、という気づきを感じさせてくれる。

ネットでは保守的な言説が多いような印象を受けるが、本著を読んでいると、不安な社会における拠り所として「日本」を求めているということなのか。著者は政治的な保守化ではないと論じているものの、保守と革新の言葉の定義自体が、相当変わってきている中で、そうとは言い切れないようにも思う。

本著の結論的なところでは、明るい未来につながるのではないかと期待させてくれる。ただ、著者がいうようなソフトさやクレイさではなく、政治意識では「愛国」が「固い」心と親和性があったという本の記憶から、排外主義に走るようだと危ういと感じる面がある。先鋭化することなく自然なソフトな形であり続けることが望ましいと思う。


(目次-引用)
第1章 日本が好きな若者たち
・日本に生まれてよかったと考える若者が98%;
愛国心が20代男性、30代女性で10ポイント以上増加;
・日本への貢献意識;(内閣府の世界青年意識調査)役立つことをしたいが41%(1988)→63.9%(2008)
・日本への誇り;「歴史や文化遺産」59.4%、「文化や芸術」44.7%、「科学や技術」39.9%
・好まれる日本の衣食住;(女性調査)おいしいご飯、和食を食べられる60.1%、温泉50.3%、四季の変化46.5%、治安の良さ、美しい自然、神社やお寺に行ったとき、
・「世界を探す旅」「自分を探す旅」から「日本を探す旅」へ;


第2章 「経済大国」という「大きな物語」の盛衰
・「大きな物語」の終わり?;
・さよなら、大衆;
・高度成長期:「経済大国」という「大きな物語」;
・1970年代:ディスカバー・ジャパン〜大きな物語の喪失と自分らしさ志向の始まり;by電通藤岡和賀夫
・1980年代:自分らしさがわからずにマニュアル志向が強まる;
・1990年代:「本当の自分」を探す;
・多様化の果ての日本志向;p80:多くの日本人が安心して同一化でき、かつ自分らしさも否定しないですむものは何か。それは「日本」なのだ。
・日本志向は保守化か?;→p93(政治的な保守化ではなく)政治、社会、経済に不安を感じるからこそ、生活意識が保守化する、伝統回帰する。伝統回帰する傾向が出てきているのだと解釈するのがいいだろう。そのとき、いわゆる「日本らしさ」というものが、そのよりどころのひとつとして選ばれているのではないだろうか。
・「手段的」「自己拡張的」日本志向から「自己充足的」「自己肯定的」日本志向へ;
・「ソリッド」でも「リキッド」でもない「ソフト」な「クレイ(粘土)」;


第3章 日本への誇りと消費
・日本志向とエコ志向;p112:日本を好む、日本の伝統的な生活、文化を好むということが、・・将来の日本にとって、かつ世界にとっても大きな課題であるエコ志向と結び付くという点が、とても重要なのである。つまり現代における日本志向は未来志向的な考え方と一致するのである。
・千年以上続く老舗;
・これからの日本;
・西洋よりも日本に関心。しかし多元化している;


おわりに
p185:アメリカの後ろ盾のおかげとはいえ、65年間平和を保ち、豊かに物も情報も溢れ、自由に物が言える日本という国を嫌いになる理由は、よほど理屈っぽく考えたりしなければ、あまりない。なにしろ、戦後最悪クラスの就職難の時代なのに、これだけ多くのの若者が日本を好きだと答えているのだから。
p188:これからの日本は、日本の文化の中にも新しい知識産業のヒントを求めることになるはずである。だとすれば、今、日本を好み、日本文化を愛する若い世代が台頭していることは、実は日本の将来を救う可能性にもつながるだろう。

{2/17-18読了,記入は26}