- 作者: 徳田雄洋
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/05/20
- メディア: 新書
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具体的な事例は豊富である。身近なところでは、余計な動きをする親切すぎるワープロソフトや、なんでミニ型のSDがいつの間にかなくなってマイクロ型になってしまったのかなど、普段、不満に思っていることがたくさん出てきて、共感できる。
また、デジタル化に伴なう困難の理由や、今後への心構えなど、ポイント5つづつあげて説明してくれるところは、なるほどと思う。
ただ、「なぜ生きにくいのか」という問いには、哲学的な部分も含まれる気がするのだが、本著で語られるのはノウハウというか技術的なことが大部分を占め、もう少し踏み込んで解説して欲しかった気がした。なぜそう感じたのか、体系的に書かれているようでいて、具体的事例が細かくて豊富にあるためか、散文的な印象を受けてしまうのかも知れない。
カセットテープにプログラムを記録し、パソコン通信でモデムを使っていた時代も経験し、倍々で容量が増え価格が下がってきた今日、溢れる情報の中でどう生きていくのか、それは著者が言う「知識伝達が十分良好に」できるだけで良いのか、デジタルネイティブは明るい未来なのか、まだまだ答えは見つからない。
(目次-引用)
序章 一九八四年の日本とアメリカ;
p2:(日本のデジタル化が始まった元年は1984年と考える)
第1章 デジタル化した世界;
p18:(光の面)新しい産業や仕事が生み出され、経済活動が活発化する。遠隔地でもいろいろなサービスを直接受けることができる。機器やシステムが自動化し便利になる。大規模な情報が利用可能となり、地球上、いつでも、どこでも、誰でも、直接に通信し、情報や知識を共有できる。
(影の面)自動化や中間過程の消滅で人々の仕事が減る。企業や店舗は広域的な市場競争にさらされる。公共システムの停止や障害で社会的混乱が発生する。情報の大規模蓄積・流出・喪失や破壊行為により、個人生活や企業活動が脅かされる。→楽観論と悲観論
第2章 情報機器との格闘;
第3章 情報洪水の中で;
第4章 困難は作られる;
第5章 デジタル社会を生き抜く;
p143~困難の5つの理由:1.ハードウェアの継続的成長、2.ソフトウエアの絶え間ない変化、3.デジタル機器・サービスについての知識伝達の不全、4.社会制度の緩慢な対応、5.ウェブサービスは無料が標準であること
p170~生きるための心構え:1.半分信用し、半分信用しない、2.必要な知識や情報を得て、自分を守り、他人の立場を尊重する、3.自分ですることの境界線を定める、4.利用することと利用しないことの境界線を定める、5.危険性を分散し、代替の方法を持つ、6.依存しすぎない
p177:私たちは、知識伝達を十分良好にできれば、デジタル社会を生きにくくないものに変えられる可能性を有している。著者も含めて送り手と伝え手の責任は大きい。
{記入は25日}