- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/08/19
- メディア: 新書
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ネットでよく目にすることが多い著者のバックボーンを知りたいと思い、読んでみた。
中谷巌氏の資本主義の欠陥を指摘した本の読後から間もないだけに、どこまでそうなのか、考えさせられた。
確かに、社会主義や共産主義の計画経済というのが破綻するということは、よくわかる。
また、サッチャーやレーガンが、この思想を取り入れたことで、経済が活性化したこともそうだろう。
ただ、今は行き過ぎたとして、クルーグマンやケインズ的手法が、改めて見直されているように思う。
自由と平等、振り子のような気がしている。どちらかに重点を置きながら、漸進していくしかないのではないのか。
一方の思想として、なるほどと思う部分はあるが、全面的には信じることは難しいと感じた。
今の経済状況、社会をどうとらえて、どこを目指していけばいいのか。さらに考えていきたい。
(目次-引用)
第1章 帝国末期のウィーン;
第2章 ハイエク対ケインズ;
第3章 社会主義との闘い;
第4章 自律分散の思想;
p78:ハイエクが「計画主義」と呼んで批判したのは、社会主義と全体主義に共通する「社会の特定の目的のために計画的に動かす」という思想だ。
第5章 合理主義への反逆;
p98:だから合理主義的な革命家が伝統的な価値を一挙に変革しようとするのに対して、ハイエクは「自然発生的にできた制度を維持し、起源や根拠のはっきりしないルールを守り、伝統や習慣を尊重せよ」と論じる。
第6章 自由主義の経済政策;
第7章 自生的秩序の進化;
p134:現在の主流はベンサム以来の「最大多数の最大幸福」を目的とする功利主義だが、ハイエクはこの功利主義を斥け、「パレート最適」のような福祉最大化を政策目標とすることも否定した。
p143:人類は何万年もの間、部族社会に生きてきたので、利他的な遺伝子が心理に埋め込まれており、むき出しの利己主義はきらわれる。また市場経済によって地域社会が解体されるため、社会は不安定になる。「格差社会」を指弾するパターナリズム(家父長主義)が、いまだに多くの人々に支持されるのも、こうした部族的感情が原因だろう。
第8章 自由な社会のルール;
p162:伝統的には抑制すべき悪徳とされてきた利己心を積極的に認めたことが、近代西欧文明が他の文明圏に比べて飛躍的に大きな富を産み出す重要な原因だったことは間違いない。
第9章 二一世紀のハイエク;
p178:ハイエクは社会で特定の目的を実現しようとする「ユートピア社会工学」を否定したが、制度(ルール)の設計を否定したわけではない。重要なのは、人為的に決めた目的に人々を従わせるテシスではなく、伝統のなかから自然に進化するノモスである。
p196:このグローバル資本主義という魔物とうまくやっていくためにも、その基本思想であるハイエクを理解することは役に立つだろう。
p200:われわれはハイエクほど自生的秩序の勝利を信じることはできないが、おそらくそれが成立するよう努力する以外に選択肢はないだろう。
(扉-要旨)
一九三〇年代、ほとんど一人で社会主義・ケインズ主義と対決したハイエクは、サッチャー、レーガン政権が成功したことで、経済学だけではなく、世界のあり方をも変えた。本書では、市場経済を全面的に信頼したハイエクの思想の今日的意義を明らかにする。彼の思想は、現在の脳科学、法体系、知的財産権、インターネットを理解する鍵を、私たちに与えてくれるのだ。現実がハイエクに追いつくには二〇世紀末までかかったが、彼の思想は、新しい社会秩序のあり方を考える羅針盤として、いま不動の位置を占める。
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