- 作者: 中野雅至
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/12/17
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 117回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
民主政権の公務員改革法案が提出され、野党側も対案を出し、天下りを巡って本格的な論戦が始まろうとしているが、その背景や制度を知るには、とてもわかりやすい本。
感覚的にはそうかな、と思っていた各省庁ごとの天下りの特徴がよく説明されている。
公務員制度改革をめぐっては、採用を減らすとか、天下り先に仕事の割には巨額がつぎ込まれている実体などが、最近よく報じられているが、こうした政権の動きとも連動したところがあるのだろう。
本著では、弊害の部分、良いという見方ができる部分、双方を列挙していき、また天下りに対する反発感情も、時代によって変わってきたことを、調査データなどをもとに示している。
しがみつかない生き方ではないが、著者が言うように「納得して定年まで働けるような仕組み」ができないと、どうにもならなくなってしまうのではないか、という危機感も感じる。
(目次ー引用)
序章 官僚たちの「第二の人生」;
第1章 あまねく広がる天下り;
第2章 天下りはなぜ発生するのか;
第3章 省庁別に見た天下りの実態;
第4章 幹部官僚たちの天下り人生;
第5章 天下りの弊害;
第6章 当世キャリア官僚の本音;
第7章 受け入れる側の事情―民間企業・特殊法人・公益法人;
第8章 天下りは根絶できるか;
終章 建設的な議論のために;
p53:このような規則性・成果主義性・生活保障・裾野の広さという四つの特徴を持つ「人事の一環としての天下り」・・斡旋の背後には「どす黒い」あるいは「黄金色」の圧力が存在するということです。
p60:各省を基盤にした人事労務管理と仕事内容という二つが交差して、天下り現象が起こっているといのがポイントです。
p94:民主主義と市場原理主義のご時世に、キャリア官僚が特権的に老後を保障されているのは不合理この上なく映ります。・・人間感情を考えれば、不況で世の中全体が暗い時、公務員に対する風当たりがきつくなるのは当たり前です。個人的には、このような「官民の労働条件の乖離」「その時々の経済情勢」こそ、天下りが嫌われる最大の理由だと思います。
p122~天下りは制度として優れている?→1.政官業の情報交換や意思疎通を容易にする貴重な役割を果たす、
2.公務員の働くインセンティブを高める優れた制度、 3.最小の人事労務管理コストで行われ非常に効率的な制度、
4.さまざまな業界や企業に天下ることで、業界内の均衡が取れてきた。
p170:結局、「人の移動」「転職」「再就職」なんて、そんなものと言えばそんなものです。人工的な規則で、簡単に止められるものではありません。・・どうやって国民の職業選択の自由を制限できるでしょうか。生活がかかっていれば、誰だってその程度のことはやります。
p179:考えられる最善の処方箋は、役人が納得して定年まで働けるような仕組みか、官民の人材が自由に行き来する社会をつくることしかありません。
{5/19読了}