読書録

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「コマギレ勤務」が社会を変える


農業関係団体の総合職として採用されながら、30歳前後の時に出産したものの、長女が障害が残り退職。パートタイマーとして働きながら中小企業診断士社会保険労務士の資格を得て、現在は人事労務関係の仕事をしていると、著者は「あとがき」に記しているが、とても大変なご経験をされたのだと思う。
ゆえに「すべての人が、幸せに働ける社会になるよう、今後も微力ながらお手伝いをしていきたい、それが私の今の願いです」という言葉には重みがある。そして本著に記された働く選択肢の多様化というのは、さまざまな困難も予想されるものの、なんとか実現させていきたい施策だと、自らの職場を振り返っても、痛感する。


「重要なのは、「働く時間が限られていても、この人を失いたくない」と評価してもらえるかどうか」(p129)というのは、短時間労働などさまざまな施策が導入されてきた中で、利用する方への大切なアドバイスだと思う。


「早く帰る人、遅く帰る人、いろんな人がいてもいいのです。いつ、何に人生の重きを置くかは人それぞれ。心から仕事を楽しめるならば、そしてその選択が周囲に迷惑をかけないのなら、何を大事にしても構わない。重要なのは、それを誰かに押し付けられるのではなく、自分で選択できることです(p180)」という言葉にも共感する。


「助け合い・相互尊重の精神のもと、誰もが「自分は社会の役に立てている」と実感できること、そんな豊かさを手に入れたいものです(p187)」「ダイバーシティ推進の前提にあるのは、「自己肯定感」、すなわち自分という存在を認めることです。言い換えれば、自分の価値観を確立し、それに自信を持つことです(p189)」という主張も、全くその通りだと思う。いわゆる「生きがい」や「幸せ」を一人ひとりが感じられるような社会・時代になればと思うが、そのためには著者が仮説として提示した「コマギレ勤務」というのは、ひとつの可能性なのかも知れない。


(目次ー引用)
はじめに 

序 短時間勤務を巡る悩み

第1章 「コマギレ勤務」はこれから増える;
1.「マイノリティ」が増えてきた
2.背景にあるのは「ワークライフバランス」⇒「多様な働き方。生き方が選択できる社会であるべき」
3.そうはいっても…企業の悩み⇒部署によって、運用方法が異なる。休職者や短時間勤務者のいる部署に代替要員を確保することが難しい。/時間は減らしても仕事内容・量が変わらない。時には残業したいができない。実際に決められた時間に帰れない。
4.企業にとってもメリットはある⇒1.職場に仕事のノウハウが蓄積できる。2.優秀な人材が確保できる。3.個人の職業能力の維持が期待できる。4.社員のモチベーションアップにつながる。5.生産性向上につながる。
5.法律も後押し
6.コマギレ勤務の選択肢を


第2章 コマギレ勤務社員の活かし方;
1.なぜコマギレ勤務はしづらいのか⇒1.仕事の絶対量が多いため。2.コマギレ勤務がしづらい業務の職場・部署のため。3.職場のマネジメントが難しいため。4.結局はノウハウ不足。
2.コマギレ勤務社員の活かし方〜基本編⇒コスト削減ではなく働く選択肢の多様化で企業の活性化につながる。 
3.コマギレ勤務社員の活かし方〜仕事効率化編⇒業務領域を絞り選択と集中、仕事を標準化・簡素化・習慣化へ。+目標や情報を共有し、コミュニケーションの総量を維持する。
4.コマギレ勤務社員の活かし方〜体制整備編⇒業務の幅を広げ『ドミノ人事』を試みる。余裕を生んで満足度向上。
5.コマギレ勤務社員の活かし方〜就業場所の多様化編⇒裁量労働や在宅勤務:生産性の向上や通勤負担の軽減
6.コマギレ勤務社員の制度化 


第3章 コマギレ勤務社員が増えた社会;
1.正社員と非正規社員の待遇差が曖昧になる⇒「同じ職場で似たような業務を担当している人の労働条件が著しく異なるのはおかしい」という雰囲気の醸成
2.正社員の働き方が変わる⇒ワークシェアリングで賃金下がることに、共働きと兼業を。
3.出生率が上がる⇒「育児と仕事の両立が難しい」退職理由目立つ
4.制約があっても雇用されるチャンスが増える⇒「働くことは生きること」そして「権利」であること。
5.社会的コストが圧縮できる⇒社会保障給付費を減らし、保険料を払う現役世代を増やす
6.労働関係その他の法規制や制度が変わる⇒多様な正社員施策の充実で職種限定正社員や勤務限定正社員


終章 コマギレ勤務で日本が変わる;
1.異質性を味方にできれば強い⇒ダイバーシティ=異質の融合で新たな発想や価値の想像を。
2.お互いを認め合える社会へ⇒「ノコギリときこり」の話:少し休んで刃を研げばというアドバイスに研いでいる暇はなく木を切るだけで精いっぱいと言い返す:今の日本では?



{8/11-15読了、記入は24}