読書録

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 「普天間」交渉秘録

「普天間」交渉秘録

「普天間」交渉秘録

これまで様々な内幕本というのがあるが、これは官僚と政治との関係を知る上で、極めて貴重で興味深い証言になっている。著者は刑事事件の罪の問われたが、この内容を読むと、もう開き直ってしまったかのように、かつての大臣、交渉相手の沖縄など、自らが記していたという日記をもとに厳しく批判していく。普天間基地問題の案が変遷した実態というのがこういうことだったのかということがわかるが、ぶれずに本質をついてくる小泉総理が素晴らしく、一方、何度も合意を破る沖縄はひどい、という印象を与える。

ただ、これは防衛官僚側の見方であって、沖縄県知事が「7年間何もしなかったことはたいしたことではない」、といったという発言の背景には、これまで琉球の時代から大国の間に挟まれてしたたかに生きてきた術というか、問題を長期化させて結局、新たな基地は作らせないということだろうから、そこを怒ってもいかがかなものかと感じた。また、沖縄が海への変更にこだわるのは土建業者の利権がからむからだと暗示し、それが組織的に作戦としてやってきたという見方についても、一面しかとらえていないようにも思う。知事が、公式的には反対しなければ選挙は厳しいという沖縄の根強い反基地感情を、どこまで理解していたのか。

この本ではまた、防衛庁から省に昇格させるために、守屋元次官が誰とどう交渉し、部下をどう動かし、対応したのか、ということも克明に描かれていて、そこまでしないと法律はできないのかと驚くとともに、こういう官僚と政治の関係があるだけに、今の民主党政権の姿勢では、なかなか「政治」はうまく進まないのだろうとも思った。これだけの労力が必要かどうかは議論があるにせよ、守屋元次官は、極めて政治力・交渉力のある官僚だったとはいえる。だからこそ、外務側からは嫌われた側面があり、最後は失脚につながる要素になったのかも知れない。

この本に登場して批判されている小池百合子氏や沖縄の関係者の方々には、ぜひ反論の論文なり本を書いて欲しいものだ。何が真実なのか、クロスチェックで見えてくることがあるだろう。それにしても、こうした交渉経緯をたどったのであれば、民主政権発足後の普天間基地をめぐる混乱は、さらに解決を難しくしていることは間違いない。

ちゃーすがや、ちゃーならん。 といいつつ、なんくるないさあ。 この二重性というか曖昧さが、沖縄の強みのような気がする。 

(目次ー引用)
第1章 在日米軍再編へ;
p62(池子問題から小泉総理は海を埋め立てる辺野古案では環境派の反対で難しいと認識していた)


第2章 「引き延ばし」と「二枚舌」;
p83(稲嶺沖縄県知事は、7年間何もしなかったことを問われて、新石垣空港のように沖縄で大きな仕事は20年かかるからたいしたことはないという)


第3章 十年の時を経て;
p164(諸井氏は沖縄に政府は何も進まなくても金をやるという悪い癖をつけたといっていたという)
p166(ウィニーで漏れた1997年新ガイドラインに基づく日米共同作戦計画は最高度の機密だったが、過去にもマスコミで報道されたと説明)


第4章 防衛庁の悲願;
p221:国会対策の基本は、無駄を承知で弾を数多く撃つことである。政局は時々刻々と変わるから、決め手は存在しない。丁稚のように低姿勢で、あらゆるところに頭を下げ続けることである。
p227:(なだしお事故対応でメディア対応と危機管理を教えられた)


第5章 不実なのは誰なのか;
p239:(参事官制度は石破大臣が、反対した守屋次官の退任後廃止したが、文民優位を作ったのは中曽根元総理はむしろ制度の創設・理解者だった)
p241:(混乱を招いたとして稲嶺県知事への厳しい批判のことば)
p259:(V字案に合意しながら違うことを言い出した仲井真知事、島袋名護市長、末松助役への怒り)



第6章 普天間はどこへ行く;
p286:(久間大臣のおかしな発言相次ぐことへの対応:イラク開戦間違い、普天間で修正案、原爆投下の正当化)
P319:(小池百合子大臣の勝手な更迭人事と抵抗)

{2/2-7読了、記入は12}