読書録

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『ローマから日本が見える』 塩野七生 著

ローマから日本が見える (集英社文庫)

ローマから日本が見える (集英社文庫)

この著者の、ヴェネチアを舞台にした本など、初期の作品はかなり読み、知的興奮を味あわせていただきてきたが、ローマ人の物語シリーズはまだ読み始めていないため、これは今後の楽しみにとっておこうかとも思いつつ、文庫本の新刊でこの本が出ていたので手に取る。歴史を踏まえた言葉の一言一言に、重みを感じる。それを今の日本を見る視点として提示しているわけだが、ある意味で、極めて現実主義的なのではある。急速な経済成長による制度疲労に陥る中で、有能なリーダーを輩出できない今の状況への危機感を訴え、その反面では、平等主義とか理想主義では、生き残っていけないということを指摘しているように思う。確かに、今の政治状況はなんともひどいと皆思っている中で、さて、どうすればいいのだろうか。

(扉)
資源も富もない、小さな都市国家ローマは「衆知を集める」という共和政の利点をフルに活用することによって、地中海世界を制覇する。しかし、勝者となったローマも「制度疲労」だけは避けることができなかった。この危機を乗り越えるべく、不世出の指導者カエサルが採った帝国方式とは―国家盛衰の法則を探りつつ、今日の日本を考える著者渾身の一冊。

(目次ー引用)
第1章 なぜ今、「古代ローマ」なのか;
p27:ローマ史を知れば知るほど、その歴史は失敗と挫折の連続であったとさえ言えます。ただ、彼らが同時代の他の民族と違ったのは、自らの失敗を認めた時にも改革を行う勇気を失わなかったところです。
p32:本当の意味の改革とは、そう簡単に実現するものではない。時間と手間がかかるものなのです。しかし、だからこそ改革には価値があるとも言える。なぜなら多くの人々はその手間を惜しむがゆえに衰退していき、その手間を惜しまなかった者だけが未来を迎えることができるのですから。


第2章 かくしてローマは誕生した;
p74:政治はあくまで結果論です。


第3章 共和政は一日にしてならず;
p82:社会主義革命の結末を持ち出すまでもなく、どんな社会にもリーダーは不可欠です。


第4章 「組織のローマ」、ここにあり;
p144:(敗者に寛容なローマ連合の事例は)「保守主義を徹底していけば、一大革新が起きる」好例とも言える。


第5章 ハンニバルの挑戦;
p177:天才とは、誰も注目しなかったことに注目し、かつそれを活用できるのが本当の天才というものです。


第6章 勝者ゆえの混迷;
p224:「武器を持たない預言者は失敗を避けられない」とマキアヴェッリは言っていますが、まさにグラックス兄弟は、「武器なき預言者」であったと言うべきでしょう。


第7章 「創造的天才」カエサル
城壁を取り壊し、通貨を改革し、ユリウス暦をはじめ、分権を導入し、護衛隊も解散する。


第8章 「パクス・ロマーナ」への道;
オクタヴィアヌスは、「上等な偽善者」として、元老院議員をすべて満足させつつ帝政に移行する離れ業をなしとげた。


第9章 ローマから日本が見える;
p328:人間行動原理の正し手を、宗教に求めたユダヤ人、哲学に求めたギリシア人、法律に求めたローマ人。
p335:成功した改革とは、自分たちの現在の姿を見つめ直し、その中で有効なものを取り出していき、それが最大限の効果を上げるよう再構築していく作業なのではないか。ローマ史を見ていると、そう思わざるを得ないのです。
p346:ヨーロッパでは正しいことを主張していても聴きいれられない人のことを「カッサンドラ」と呼びます。


特別付録 英雄たちの通信簿
p360〜:(イタリアの高校で使われている歴史教科書で、指導者に求められている資質として次の5つ)知力、説得力、肉体上の耐久力、自己制御の能力、持続する意思・・日本の場合なら、決断力、実行力、判断力などといったことが触れられていない・・当然のことだから

{地区センターで2/21借り23読了、記入は28で作業中}