読書録

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『犯罪は「この場所」で起こる』 小宮信夫 著

犯罪は「この場所」で起こる (光文社新書)

犯罪は「この場所」で起こる (光文社新書)

欧米の最近の研究で、犯罪のほとんどは、二つの基準が満たされた場所、すなわち「入りやすい場所」と「見えにくい場所」で起きていることが分かったと、まずプロローグで紹介したあと、ニューヨークの犯罪減少に役立ったという「割れ窓理論」などについて言及し、
「地域安全マップ」などの具体例を紹介していく、極めて実践的な本だ。


この本で紹介されている、大阪の小学校での児童殺傷事件や、奈良の女児誘拐殺人事件が起きた時には、関西にいたことから、身近な課題として感じた。


(扉より)
門が閉まっていれば入らなかった―大阪小学校内児童殺傷事件の公判で、加害者はこう述べたという。従来、犯罪対策は、犯罪者の人格や劣悪な境遇(家庭・学校・会社など)に犯罪の原因を求め、それを除去しようとすることが中心であった。しかしながら、このような処遇プログラムは結局再犯率を下げることができなった。こうした「原因追及」の呪縛を解き、犯罪の予防に新しい視点を与えるのが、「犯罪機会論」である。本書では、どのような「場所」が犯罪を引き起こすのか、また、物的環境(道路や建物、公園など)設計や、人的環境(団結心や縄張り意識、警戒心)の改善を通して、いかに犯罪者に都合の悪い状況を作りだし、予防につなげることができるのかを、豊富な写真と具体例で紹介する。

(目次ー引用)
第1章 機会なければ犯罪なし―原因論から機会論へ
(1)欧米の犯罪対策はなぜ成功したのか;
1980年代に台頭・・被害者の視点からすきを見せなければ犯罪者は犯行を思いとどまる


(2)新しい犯罪学―犯罪をあきらめさせるアイデア
p33:図:ミクロ心理構造{妄想性、多動性、易怒性}、メゾ相互作用過程{いじめ、学業不振、家庭内不和}、マクロ社会構造{情報化、私事化、消費社会化}→犯罪原因の除去は極めて困難な課題


第2章 犯罪に強い空間デザイン―ハ−ド面の対策
(1)「防犯環境設計」で守りを固める;
p45:図:犯罪に強い要素{抵抗性、領域性、監視性}、ハードな要素{恒常性、区画性、無死角性}、ソフトな要素{管理意識、縄張意識、当事者意識}{1番目は標的、2〜3番目は場所の列}→人格ではなく状況を変える=状況的犯罪防止→抵抗性と領域性と監視性を高いものにする各種の工夫
p49:物理的・心理的なバリア(領域性)があれば、標的への接近を防げる。次に、犯罪者が勢力圏の内側に入り込んでも、目撃される可能性(監視性)が高ければ犯行に移る動きを阻止できる。さらに犯罪者が標的に近づいても、その抵抗力が高ければ犯行を防げる。


(2)監視カメラが見守る、監視カメラを見張る;
p76:イギリスでは、バルガー事件(1993年)少年2人による誘拐殺害で事件解決に一役買ったことで、国民の支持と期待が高まる。
p87:モニター室への訪問者に守秘義務を課す告知文で、漏らさないことを受諾させるなど、プライバシーに配慮+評価研究も


第3章 犯罪に強いコミュニティデザイン―ソフト面の対策
(1)「割れ窓理論」で絆を強める;
p100:ジェームズ・ウィルソンとジョージ・ケリング1982年に提唱したBroken Windows Theory=縄張意識と当事者意識が低い「場所」の象徴である割れた窓ガラスが放置されているような場所では、犯罪者といえでも警戒心を抱くことなく気軽に立ち入ることができ、犯罪を実行してもみつからないだろうと思い、安心して犯罪に着手する。→縄張意識を高めることで心理的なバリアを築こうとする。
p102:犯罪の減少という大きな変化を引き起こすためには、秩序違反行為の減少という小さな変化を起こすことから始める必要がある。exニューヨークの地下鉄の落書き消し
p132:イギリスでは「犯罪及び秩序違反法」として、「反社会的行動命令」が新設された。
p140:日本においても、犯罪機会の減少策を考える際には、「パートナーシップ」「コミュニティ」「秩序違反」「問題解決」といった言葉をキーワードにすることが有益であろう。


(2)被害防止教育の切り札「地域安全マップ」の魅力;
p178:人(犯罪者)よりも場所(地域)を重視する犯罪機会論にたてば、犯罪が起こりにくい地域づくりの方法を身につけさせる被害防止教育の必要性にも思いが及ぶのである。


第4章 犯罪から遠ざかるライフデザイン―もう一つの機会論
(1)立ち直りの「機会」をどう与えるか;
p189:レジリエンス(回復力)−困難を乗り越えていく
p190:危険因子の数を減らすことができなくても、保護因子の数を増やすことができれば、犯罪は防止できるという


(2)非行防止教育で「対話」と「参加」を促す;
p219:犯罪誘発的な社会潮流を前提として、その負の影響を軽減するレジリエンスを持たせること。→社会性や市民性を高める
情報化:情報通信技術が発達し普及すること
私事化:社会への無関心が広がり自己中心的な行動が増えること
消費社会化:過剰な消費や即時の消費が増えること


{図書館で2/15借り20読了、記入は22}