読書録

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『高校生のためのメディア・リテラシー』 林直哉 著

高校生のためのメディア・リテラシー (ちくまプリマー新書)

高校生のためのメディア・リテラシー (ちくまプリマー新書)

高校生向けの本ながら、様々な「気づき」を与えてくれた。こうした先生がおられること、そして生徒たちの取り組みに感動した。
とりわけ、卒業式を手作りにしようと改革して、それを実現したこと。とても素敵な学校の憲法。自分の高校時代をふりかえり、卒業式の検討委員会というのは立ち上げたのに、結局実現できなかったことを思い出した。
また、自分の足でかせぐこと、映像で人を紹介する際の工夫、「気づき」の大切さ、しばらく忘れていたような気もする大切なことを、思い起こさせてくれた。


(目次-内容)
関係性1 調べる取材する―自分と社会の関係性(カメラとマイクの威力とは?;取材は「あたま」、作品は「しっぽ」 ほか);
高校野球ばかりがなぜ報道されるのかを疑問に思って取材した高校生が、報道側への取材を通して矛盾を知る。自分と社会との位置関係を認識しないと、ニュースもわかったという感覚では理解できない。また、目の見えない方への取材を通して、偏見からいろいろな幸せの形があると知る。音で風景も見える。青木湖を守れという取材では、単なる環境ではなく、経済波及効果の狙いを知り苦闘する。
p40:どんな小さな気づきにも発見の感動があり、強い印象が残ります。この感動が力を生み出すのです。


関係性2 伝わる表現のために―メディアとの関係性(イメージはモノにならないとわからない;形がない「人柄」を映像で撮る? ほか);
・人柄を映像で表現するために、表情や状況をアップやロングなど組み合わせて構成することを学ぶ。面接でうまく自己表現ができなかった生徒が、小道具を使うことで表現できた SHOW & TELLの手法。一個の鉢植えを文章でスケッチするという課題で、緻密に言葉を選び、彩り豊かな表現を学ぶ。


関係性3 葛藤が力になる―自分の中の他者との関係性(「自分の中の他者」とはなにか;臆病であることの大切さ ほか);
・あるあるの問題では、内なる他者を育成する現場作りが不十分だったためで、立場の異なる仲間のいる制作環境が必要。
p90:(メディア使いになるには)表現する体験を繰り返し、体にしみこませながら、自分の中の送り手と受け手の両方をじっくり育てること以外に方法はないようです。メディア・リテラシーの獲得は、いわば漢方薬や生活習慣改善による治療のようでもあります。遠回りでも自分の中の他者をじっくり確実に醸成していくしかないのです。
p96:メディア使いとは、メディアの特性を知り、それを使いこなして、自分が伝えたいことを表現し、さらに問題を読み解いていく活動です。そのためには、文字通り総合力を身につけなくてはなりません。


関係性4 作品がコミュニティを変える―循環する関係性(卒業式 や入学式の意味を考えたことありますか?;放送部のある番組が学校の雰囲気を変えた ほか);
・学校放送から文化祭、卒業式、入学式まで、徐々に係わりが広がって、意味のある形にかえていった取組が紹介される。卒業式の改善では、先生を説得して20分だけという限定ながら実現させる。成功したのは、卒業生が表現の主体となり、3年間を振り返り、高校生活に決別し、旅立ちの決意を述べる」コンセプトで貫かれ、従来の形に「誰に何をどのように表現するか」を考えた。さらに文化祭で、松本美須々ヶ丘学校の憲法を1996年8月30日に制定した。第一条:自由に甘えず、自由を育てよう。第二条:人に左右されずに「自分」を精一杯表現しよう。第三条:クラブも授業も真面目に参加し、自分で自分を鍛えよう。第四条:クラス、学年にこだわらず、助け合い協力しよう。第五条:購買のおばちゃんに感謝しよう。入学式では、この憲法制定のドキュメンタリーを流し、生徒会長が、「おめでとうとはいいません・・・すべてはここから始まります。・・・一緒に頑張りましょう」と挨拶する。


関係性の定成形 「青木湖」その後(一本のビデオが動かしたもの;「全国大会のホールで…」と願った夢が現実に ほか)
・青木湖のビデオが地元に反響を呼びシンポジウムも開催されるようになる。その過程を紹介した作品が、1988年7月の第35回NHK杯全国高校放送コンテスト研究発表部門で最優秀賞を受賞する(大町北高校)。
p174〜苦しい活動だからこそ「気づきの瞬間」に立ち会う機会が豊富だった。・・・現場で子どもたちが気づき、発見し、獲得していく学習環境を生み出せなくては、おそらくメディア・リテラシーは日本に根付いていかないだろう。


{図書館で12/14借り22読了、記入は27}