読書録

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『内側から見た富士通』 城繁幸

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

富士通人事部の元社員の著者が、成果主義の導入によって、いかに会社が駄目になっていったかを、これでもかというぐらい批判的に綴っている。能力に応じた昇給というのはうたい文句だけで、実際には人件費の抑制のためにうまく利用され、評価も恣意的で救いようがない。いま、同じような制度のもと、同じような課題を抱えているように思え、悲しくなってくる。しかし、著者もいうように、いまさら年功序列制度に戻るような状況にもなく、悩ましい。

p26:目標管理型の評価システムを利用した成果主義の概要 1.部門ごとの目標作成と個人へのブレイクダウン 2.評価結果の賞与額および昇給額への反映 3.裁量労働制の導入

p65:品質低下と社員の二極分化の進行:仕事をやり遂げるという目的意識が、いつの間にか、単に目標を達成する というドライなものにかわった。
p67:裁量労働制導入は人件費カットが目的:時間外手当が支給対象外になる
p71:人件費が2割りもアップするという矛盾:不満分子を大量生産し、ネットで会社の批判中傷をし始める。できる社員は裁量、普通の社員は残業を伸ばす、二極化の進行で人件費もアップ。
p76:評価のインフレーションがはじまる:評価の高い人間が集まる本部では、インフレに。
p78:相対評価から絶対評価への移行により、社内はできる社員ばかりという皮肉
p81:誰もが失敗の可能性の少ない目標を選び、やりがいがあるが達成が難しい目標などは選ばない→ドングリの背比べに→チームワークや愛社精神など、年功制で培ってきた大事なものまで失ってしまった。企業文化である「チャレンジングな精神」も「高い技術力」も失ってしまった。信じられないことに、わずか数年の間にである。
p83:(やる気は降格への恐怖と昇格への期待だが、降格制度が存在しないことが最大の欠陥と指摘)

p119:(明確な数値目標から抽象的に転換、加えて原点を恐れ低いハードルにしか挑もうとしない従業員たち。悪循環で負のスパイラルに・・経営陣は人事部門から空理空論ばかりを吹き込まれているため、目標達成できないのは、従業員が悪い・・

p149:成果主義が大失敗に終わった原因:制度的欠陥、年功制度が根強く残る社風、など置き去りにして、人事部という腐敗した組織をあげるしかない。

p157:朝日の成果主義賃金見直しの記事:弊害を問う声は、失敗を恐れるあまりあまり長期間にわたる高い目標に挑戦しなくなったため、1.ヒット商品が生まれなくなった 2.納入した商品のアフターケアなど地味な通常業務がおろそかになり、トラブルが頻発して顧客に逃げられる 3.自分の目標達成で手いっぱいになり、問題が起きても他人におしつけようとする・・・。

p173:人事の視点は、常に人を上から見下ろすものであり、現場の従業員の視点はない。

p186:人間が働くということは、・・・働いてよかったという充足感が欲しいのだ。・・「未来」に希望さえあれば、多少のことなら我慢できる。辛い労働だって、人間はちゃんとこなす。

p196:日本独自の改良型「成果主義」が必要だ。組織が永遠に拡張することと、既存のビジネスモデルが半永久的に変わらないこと という年功制度維持の絶対必要条件。

p209:成果主義を成功させるには、成績公開が必要

{図書館で11/2借り12読了、同日〜14記入}