読書録

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『「私はうつ」と言いたがる人たち』 香山リカ 著

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

ほんとうのうつで苦しんでいる人たちがいる一方で、うつと診断されて喜び、リゾートに出かけたり気ままに過ごしたりする人もいる。
とても生きにくい時代に、この病気をどうとらえてよいのか、とても難しい。
宮崎勤元死刑囚に、さまざまな病名がついたように、精神医療の世界は、どうにでもなるようなところがある ということを、香山さんは、この本の中で、実直に語ってくれている。
「頑張って」というのは禁物、ということにも疑問を投げかけ、普通の病気として扱うことはできないのかと提言する。

(引用)
p40:雅子さまの高級レストランやブティックへの外出というリハビリ、あるいは、うつ病との診断書で長期休職している人のロンドン留学や洞窟探検というリハビリを耳にしたときに、一般のひとたちはどう思うだろう。・・反応は二つ:1.職場の人たちに迷惑をかけていることを考え、海外旅行やレジャーは避けるべき 2.旅行やレジャーができるなら仕事だってがんばればできるのではないか。

p43〜古典的うつは全体的には沈んだ状態だが、最近は「非定形うつ」が増えてきた。ふたつの種類があり、1.気分障害 双極2型は、活動性が高まる躁状態が周期的に出現する 2.自分が直面している状況によって、うつ症状が強くなったり軽くなったりする状況依存的。

p52:うつ病セレブは、新しい非定形うつの問題と、自由や権利意識の濫用といった問題とが重なることによってできあがった、と考えてよいのではないだろうか。

p64:うつ病セレブになれるのは大企業の正社員、公務員など・・解雇を通告されたり医療を受けられない「うつ病難民」が多数発生。
p70:難民化しやすいのは、勤勉、実直、努力家、責任感が強い、といった「メランコリー親和型」という性格特性をもった人たち。

p83:いま「うつ病」は、自分の置かれた不本意な状況や調子の悪さを自分で納得しまわりに理解してもらうため、最適なひとことになりつつある。

p93:安易に診断書を出す精神科医にも問題、西城有朋「精神科医はなぜ心を病むのか」過保護に育てられたいまの若者は、不平不満を隠すことがなく・・そうした気質の変化や文化の違いがうつ病にも反映し、症状や不眠やイライラなど外側に爆発する形で出るといわれる。

p121:天笠崇『現代の労働とメンタルヘルス』(かもがわ出版 2008年)より「いま、あらゆる職場で、とくに鬱病躁鬱病を中心とした気分障害と呼ばれる精神疾患が急増しています」→p122:メンタルヘルスの問題で長期間にわたって休む人が近年、急増しており、2003年から2004年を境に身体疾患による休職者の数より多くなった、というのだ。

p133:備瀬哲弘『D’(ディーダッシュ)な人々』(マキノ出版 2007年)うつ病に似ている状態や、状況や場面によりうつうつした気分が出現しやすい状態が、D’・・適応障害や気分変調性障害で、うつ病とは違う。

p142:うつ病と診断してがっかりした人はうつ病うつ病と診断して喜ぶ人はうつ病じゃない・・線維筋痛症という原因不明の痛みが、プロフィールに×病名として、ポストうつ病の有力候補に。

p161:仕事には行けないけれど海外旅行は大丈夫といった新しいタイプのうつの人たちの増加を、・・・職場ストレスの増加だけで説明するのはやはり無理があるだろう。

p163:成果主義を見直そうとする企業がふえつつあることを

p169:「うつ病になる人は成果主義やモンスター化する利用者の犠牲者」と考える人もふえつつある。

p182:野村総一郎うつ病の真実』(日本評論社 2008年)うつ病はずるずる休んでちょっと出社してまた休むような状態とは全く違う、ある意味で格調の高い病だと、著者は考えているのだ。

p187:認知療法で以下を書き出し  1.その場の状況 2.その時に感じた気分や感情 3.その瞬間、浮かんでいた考え(自動思考) 4.自動思考を裏付け、根拠となるような事実 5.自動思考をくつがえすような事実 6.これらの項目から考えられる、より視野を広げた、バランスの良い考え方(適応思考) 7.考えを変えた結果、気分がどのように変化したか

p191:最悪なのは、心の中では「この人はほんとうはもう仕事に来られるはずなのにサボっているだけじゃないかな」と思いながらも、「うつ病に頑張れという励ましは禁止だし」と思いとどまり、「好きなだけゆっくり休んでいいのよ」など心にもないことを伝える、という態度だ。・・本音と建前が違うと、目に見えないストレスにこそなれ、少しもプラスにならないのだ。

p193:うつ病は、ふつうの病気だ。・・誰でもがなるが、多くの場合は、ふつうに治療すれば、ふつうに回復する

p197:とりようによっては、精神科医である私が「その不調は精神科の問題かどうか、ちょっと考えなおしてみて」と呼びかける、というこの本は暴挙めいているだろう


{フォーラムで10/30借り11/10読了、記入は11〜12}