読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

『電車の中で化粧する女たち』米澤泉 著

芸能界にうとく、化粧のメーカーやブランドなどともほぼ無縁なのだが、最近の若者文化論なのかとも思い、手に取る。
青春時代を過ごした「なんとなくクリスタル」の頃から、ガングロ、そして今へと、化粧をめぐる変遷を時代状況とからめて解説していて面白い。女性誌を読むことはないのだが、この本で、かつてのコスモポリタンなどが厳しくなり、今は、化粧を取り扱った雑誌が主流になっていることを初めて知った・・・ただ、ガングロからコスメフリークにいたる系譜は、著者が暗示するように、究極の女性自立運動にも近いのかもしれない。男性を気にするのではないのだから。ホストに熱中していた「中村うさぎ」さんの、化粧・整形ときてつぶやく、「私が私を愛せるなら、私は春樹なんかもう必要としない」という言葉(p137)や、林真理子さんさえ、「君島十和子を手本にこの道を歩まざるを得なくなった」(p76)という時代状況なのだ。

そして著者は、コスメフリークとオタクには、内面不在の時代に共通項があるとする。(p165)すなわち、「1現実を凌駕する虚構の世界の重視、 2.情報化されたキャラクターとしての私の認識、3.文化のデータべース消費 ・・この3つの共通項の通底に、現実の意味よりも虚構の世界の情報を重視する90年代以降の時代の特質というものが見て取れるからである。」
p170:オタクがアニメの世界に生きるように、コスメフリークは、化粧という虚構の世界に生きている。どちらも現実の私、本当の私を直視しようとしないという点で、同じぐらい「オタク」なのだ。

{フォーラムで6/29借り7/23読了、24記入}